メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

船が沈没?

イスタンブールは暑い日が続いております。ボスポラス海峡からマルマラ海にかけて、イスタンブール周辺の海は結構水がきれいで、いくつか海水浴場もあるけれど、子供たちは所構わずそこいらの海岸から飛び込んでいるようです。
4、5年前、やはり同じように暑かったある夏の昼、アジア側のカドゥキョイから船に乗ってヨーロッパ側のエミノニュへ向かっていた時のことです。

私は、二階建て構造になっている船の一階の船室に座っていました。向かいの席では、人の良さそうな、落ち着いた感じの青年が二人、先程からパソコンのプログラムについて何やら熱心に話し込んでいます。

船はカドゥキョイの港湾を遮る堤防を越え、ボスポラス海峡マルマラ海が交わる辺りへ出たところでした。
俄かに周囲が騒がしくなり、「船が沈没した!」とか「人が溺れている!」と叫ぶ声が聴こえ、船室に居た人たちも様子を見に次々と外へ出て行きます。

周囲を見渡した時に向かいの青年たちと目が合ったので、「何かあったようだね」と声をかけたら、「沈没しているのは、この船だったりして、グフフフ」と笑い、二人とも落ち着いたものです。

しかし、私の方は、野次馬根性をどうにも抑えることができずに外へ出て、人々が群がっている側のデッキへ行き、皆が指差す方向を注視したところ、そこには悠然と泳ぐ男の姿が・・。

あまりの暑さに堤防から飛び込んでしまったのでしょうか、いずれにせよ、その泳ぎは達者なもので、溺れてしまいそうな様子は全くありません。
すると、今度はそこへ、乗務員からのアナウンスがあり、曰く、「乗客の皆さん、泳いでいる男性は自らの意志で海に入ったようです。近辺に沈没した船などは無く、こちらは心配に及びませんが、当船は皆さんが片方のデッキに寄り集まってしまった為、傾斜して危険な状態となっています。どうか船室にお戻り下さい」。
言われて見ると、確かに船は、我々が集まっている方へかなり傾いでいます。人々の間から驚きの声があがり、皆そそくさと船室へ戻り始めました。

私も皆に続いて元の席へ戻ったけれど、落ち着き払った青年たちの前では、何だか気恥ずかしい思いがしたものです。

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