メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

オランダ貴族の女性

91年にイズミルトルコ語教室で学んでいた頃のことです。同じ教室に、トルコ人男性と結婚しているオランダ人の若い女性がいました。

何という御名前だったか忘れてしまったけれど、姓の前にヴァンデルが付くことだけは良く覚えています。というのも、彼女が自分の家族のことを話しながら、オランダで姓にヴァンデルが付くのは全て貴族であると説明していたからです。
この時私は、彼女が言ったことを正確に聴き取れないまま、「それなら、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホという画家がいたけれど、あの人も貴族だったわけ?」と訊いてみたんですが、彼女はちょっと嫌な顔をしながら、「ヴァンじゃありません。ヴァンデルです」と強調していました。
この女性が、インドネシアの話が出て来た時に、「それも私たちのもの!(オ・ダ・ビズィムキ!)」と口走ったのも驚いたけれど、「トルコは文化程度が低い」と言い、その理由として“大統領も肉屋も同じトルコ語を話している”ことを上げたのには、少なからずカルチャーショックを受けたものです。
もちろんトルコ語も、話し手の知識の度合いに従って、使用する単語や表現の方法は異なってきます。これは日本でも同じでしょう。

しかし、オランダの場合、江戸時代の日本でお武家さんと町人がそれぞれ違う言葉を話していたのと同様か、もしくはそれ以上に異なる“言語”が、今でも階級によって使い分けられているようです。

とはいえ、トルコもかつてはオスマン朝の宮廷で、庶民が話すトルコ語とはかなり異なる“オスマン語”が話されていたというから、何処でも似たようなものだったのかもしれません。
教室から学生寮に戻って来て、同じ部屋にいたトゥファンというドイツ帰りの学生にこの話をしたら、「オランダはそうらしいね。ドイツはヒトラーが階級をぶち壊してしまったから、それほど明確になっていない。ヒトラーは悪いことばかりやっていたんじゃないんだよ」なんて話していました。

merhaba-ajansi.hatenablog.com