先日、配送先のカー用品店でシルヴィ・ヴァルタン(Sylvie Vartan)の「あなたのとりこ」が流れているのを聴いた。日本では1970年にヒットしたそうだ。
懐かしく思いながら、『ところで、シルヴィ・ヴァルタンって未だ生きているのかな?』と気になり、ネットで検索してみたら、御存命どころか、77歳にして今でも第一線で活躍中というから驚いた。
他にも、フランスの歌手として知られているが、生まれたのはブルガリアであり、アルメニア人の家系と明らかにされていたので、これにも驚かされた。
そういえば、トルコでも「Vartan」という名前のアルメニア人について書かれた記事を読んだような記憶がある。早速、こちらも検索してみたところ、以下の「Vartan Paşa(ヴァルタン将軍)」に関する記述が出て来た。
ヴァルタン・パシャ(将軍)は、19世紀にオスマン帝国の高官として活躍した人物で、「Akabi Hikâyesi(アカビの物語)」という小説を著したことでも知られているという。
「アカビの物語」は、アカビというアルメニア正教徒の娘に魅せられたカトリックのアルメニア人青年の悲恋を描いた小説で、トルコ語によって記された初めての「小説」とも言われているそうだ。
オスマン帝国のアルメニア人社会は、当初、正教会を基にまとまっていたが、その後、西欧からカトリックが布教され、カトリックの信徒となったアルメニア人と正教会のアルメニア人との間に深刻な対立が生じていたらしい。
カトリックと正教会の対立は、今問題になっているウクライナでも見られるようだけれど、全く異なる宗教よりも宗派間の対立は一層深刻になってしまうものなのかもしれない。
それから、「アカビの物語」はトルコ語の小説ではあるものの、表記に使われたのはアルメニア文字であり、読者はオスマン帝国のアルメニア人に限られていたそうである。
上記のウイキペディアのトルコ語版の記述によれば、当時、帝国内の一般のアルメニア人はトルコ語に通じていても、アラビア文字を読みこなせる人は少なく、そのため、アルメニア文字で記されていたという。
また、彼らがアルメニア人の学校で文字を学ぶ際にも使われたアルメニア語の書籍は古典ばかりであり、当時の日常を描くためには、アルメニア語よりもトルコ語が適していたという事情があったらしい。
なんにしても、シルヴィ・ヴァルタンからこんな話まで行きつくなんて、全ては「あなたのとりこ」のお陰であるような気がする。