メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

腎臓結石

最初に病院で結石と診断されたのは、91年、初めてトルコへやって来て未だ一ヶ月経つか経たないかという頃。

逗留していたイズミルの宿で、金曜日の夜中に激痛で目を覚ましたものの、土日と病院は休んでいるから、「この痛みはいったい何だろう?」と脅えながらも我慢し、月曜日になって宿の近くにある国立病院へ行ってみました。
トルコの国立病院というのは、設備は悪いけれど、診療費も安く、トルコ国民の場合は国民保険のようなもので診療を受けられるとあって、その病院も診療を待つ人々でごった返しており、暫くの間、混雑した廊下などの様子を茫然と眺めてから、ようやく診察室へ。

中年の医師は、私が痛む所を示して見せると、他にこれといった診察もせずに、採尿とレントゲンを指示して、また明日来るように言います。

翌日、再び訪れたところ、医師はレントゲン写真を見せながら何やら説明し、それから、紙に腎臓から尿管・膀胱に至る部分の絵を描き、尿管に結石が詰まっているのと腎臓が腫れていることを絵によって明らかにした上、メスをふるう動作で緊急手術の必要性を強調したのです。

私が驚いて、「もう少し考える」「日本へ帰る」といったことを片言のトルコ語で伝えると、「それでは御自由に」と明らかにムッとした表情でした。
「これはえらいことになった」と思いながら宿へ帰り、診察結果をそこに下宿していたトルコ人学生に伝えると、「この記事を読んでみなさい」と彼が数日前の新聞を持って来たので、早速、辞書を引きながら読んで見れば、これがまた、なかなか衝撃的な内容でした。
トルコの何処だったか地方都市に住む女性が腎臓結石の手術を国立病院で受けたら、一月ぐらいしてまた同じ個所が痛み始めたので、今度は他の病院へ行き、「腎臓結石が再発したのでしょうか?」と医師に尋ねたところ、

診察を終えた医師は、「こちら側の腎臓で結石が再発する可能性は全くありません。何故なら、こちら側にはもう腎臓がありませんから」と答えたという話。

つまり、国立病院で手術を担当した医師は、結石どころか腎臓そのものを取り去ってしまったわけで、記事では、この医師が臓器売買に関わっていた疑いも指摘されていました。
この内容に、私は思わず愕然となってしまいましたが、記事を持って来てくれた学生が、親切なことにも、色々手を尽くして、腎臓結石のレーザー治療が可能な医院を探してくれたので、翌日、その医院を訪ねて見ることにしたのです。