メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

病院たらいまわし!

先月、勤務先で義務付けられている健康診断を受けたところ、診断結果の「腫瘍マーカー」という欄に「再診が必要」という印があり、再診結果を会社に報告しなければならなくなった。

そのため、診断を受けた病院に赴いて、受付で診断結果を見せて相談すると、看護師の方が出て来て、「前立腺癌の初期症状ですが、今日は泌尿器科が休みなので、他の泌尿器科クリニックに行って見て下さい。外科的治療になるのか、ホルモン剤の投与になるのか解りませんが、暫く通院することになりますから、ご自宅に近いクリニックが良いでしょう」と説明してくれた。

『これはえらいことになった』と驚き、三ノ宮の駅まで20分ほど歩きながら、治療費やら何やら取り留めもなく考えただけで暗澹たる気分に陥った。

駅に着いてから、まずスマホで自宅近くの泌尿器科を探し、ついでに「腫瘍マーカー」というのも調べてみた。ところが、前立腺癌では「PSA」という項目の数値に異常が出ると記されているのに、診断結果の欄で印がついているのは「CEA」という項目であり、「PSA」の数値は何の問題も無さそうに思えた。とはいえ、素人考えより専門家である看護師さんの意見に従うべきだろう。

それで、帰りがけに探しておいた自宅近くの泌尿器科クリニックへ寄ってみた。直ぐに診察してくれた初老の先生も、やはり「PSA」の数値に問題はないため、前立腺癌の疑いは無く、「CEA」は消化器系に関わるものだから、消化器系を扱っているクリニックへ行くようにと説明した後、一応レントゲンを撮って、腎臓の辺りを調べてくれた。診断結果の「過去の病歴」欄に「尿管結石」が記されていたからである。

結果は、まだ右側の腎臓に結石が見られるけれど、治療が必要なレベルではないので、今後は自覚症状がなくても1年に一度ぐらいは検査を受けた方が良いというお話だった。

『やれやれ、あの看護師さんは何を見て前立腺癌などと言ったのだろう?』と思いながら、スマホで近くの消化器系クリニックを探し出し、その日は自宅に帰った。

しかし、まさかとは思うが、看護師さんが前立腺癌初期の患者と私を取り違えて説明していたとしたら、ちょっと問題である。前立腺癌初期の患者さんの方は何の心配もないことになってしまうからだ。

トルコの古いコメディー映画にそういう話があった。医師が「余命3カ月」と「極めて健康体」のカルテを取り違えた挙句、極めて健康な青年に「余命3カ月」を宣告してしまう。絶望に陥った青年は、殺し屋に自分の希望する日に自分を殺すように依頼したが、その後、街角に仕掛けられた時限爆弾を恐れることもなく処理したりして、瞬く間に街の英雄となる・・・。まあ、この映画は、殺し屋が交通事故で死んでしまい、青年はカルテの取り違えを伝えに来た美人看護師と結ばれるというハッピーエンドに終わるのだが、私の身の上にもそんなことは起こり得るだろうか・・・。

さて、「病院たらいまわし」の続きだけれど、日を改めて訪れた消化器系を扱うクリニックの医師は、かなり高齢で、それこそ「余命数年」といった雰囲気の方だった。ところが、「CEA」の方は紹介状を書くから最寄りの総合病院で診てもらってくれと言いながら、採血したりレントゲンを撮ったり、健康診断結果の隅に記されていた「肩こり」に注目してクリニックへの定期通院を勧めたうえ、湿布薬まで出したりして、5000円もの診療代を請求してきた。「余命数年」で何処まで稼ぐつもりなのだろう?

そして、また日を改めて訪れた総合病院では、「CEA」の内容について詳しい説明があり、結局、「癌の可能性はあまりないと思いますが、はっきりさせたいのであれば、後は胃カメラを試してみるぐらいでしょう」と言われて一段落ついてしまった。まったく、この数日はいったい何だったのかと思う。

*そのトルコの古いコメディ映画


Korkusuz Korkak - HD Türk Filmi (Kemal Sunal)