2019年5月、「多極化世界におけるトルコ」という論説をトルコのアイドゥンルック紙に寄稿したロシアの思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏は、2018年3月、トルコの放送局の取材を受け、トルコへの熱い思いを語っていた。その模様は以下のYouTube動画から御覧になれる。
ドゥーギン氏によると、ロシア人のアイデンティティーはスラブだけで成り立っているわけではない。ロシア人のルーツには、ギリシャの要素もあればトルコの要素もあるという。
「私たちもチンギス・ハンの子孫である」と明らかにしたドゥーギン氏は、そのために、トルコ人の祖国愛が理解できるそうである。
しかし、私がこの動画を観て、最も驚いたのは、ドゥーギン氏が2016年の7月にトルコを訪れていて、クーデター事件が勃発した時はアンカラの空港にいたと語っている所である。
クーデター事件に関しては、以下のようなプーチン大統領の発言が伝えられている。
「トルコのエルドアン大統領が、私に、クーデターへアメリカが関与したと述べたことは一度もない。しかし、私は次のように考えている。もしも、ギュレンが実際にクーデターへ関与していたのであれば、アメリカの情報機関が、この事件の過程を知らなかったとは想像し難い。また、アメリカ空軍は、トルコのインジルリク基地に駐屯しているけれど、インジルリク基地の軍人たちこそが、クーデターの企てを実行に移したのである。・・・」
おそらく、プーチン大統領はドゥーギン氏から生の情報も得ていたのではないだろうか?
そもそも、ドゥーギン氏がトルコを訪れたのは、2015年の11月にシリア国境付近でトルコ空軍の戦闘機がロシア軍機を撃墜した事件で、ギュレン教団の関与に言及したエルドアン大統領を支持するためだったという。(このトルコ戦闘機のパイロットはギュレン教団の信者であったとされている)
ドゥーギン氏は、撃墜事件をトルコとロシアの関係悪化を目論む米国が仕組んだ「陰謀」とほぼ断定的に主張している。そればかりか、2016年12月、アンカラでロシアのカルロフ大使が暗殺された事件も、ドゥーギン氏によれば、同様に「米国の陰謀」であるそうだ。
ロシアは撃墜事件の際、一時的にトルコと断交したが、大使暗殺事件では哀悼の意を明らかにしただけで、トルコに対しては何の処置も取らなかったばかりか、非難することさえなかった。何故なら、事件が米国の陰謀であることを知っていたからだとドゥーギン氏は述べている。