メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコとシリアの関係修復の可能性?

先週、記者との質疑応答の中でチャヴシュオール外相が、昨年、国際会議に出席した際、シリアの外相と立ち話をしたと明らかにしながら、「シリアの反政府勢力と体制を和解させなければ、恒久的な平和は実現できない」と述べたため、『エルドアンとアサドの会談も有り得るのではないか?』という憶測がトルコでは囁かれている。

ソチでプーチン大統領と会談した帰途に、エルドアン大統領が「プーチンからシリア政府との協議を勧められた」と明かしたことも憶測が広がる要因になったようだ。

実際、諜報機関同士のレベルでは、シリアとの協議が始まっているらしい。チャヴシュオール外相もそれは認めているが「大統領の会談」は否定した。

この問題について、今日(8月14日付け)のアイドゥンルック紙のコラムでは、フィクレット・アクフラット氏が自説を展開している。

2017年4月に帰国して以来、何か大きなニュースでもなければ、シリア問題の記事にまで目を通す余裕もなかったので、所々、良く理解できていない部分もあるが、興味深く思えた内容を少しお伝えしたい。

断固反米・親ロシア・親中国のアイドゥンルック紙で、アクフラット氏にも同様の傾向があるけれど、以前からシリア情勢に関してはかなり的確な論説が見られたのではないかと思う。

まず、アクフラット氏は、11年に及ぶ反目の後で関係を修復するのは難しいと断っている。

シリアにもトルコにも、それを望まない人たちがいるだけでなく、何より米国とイスラエルがそれを妨害しようとするはずだと言うのである。

また、トルコが実効支配している領域でも、反発が広がってトルコの国旗が焼かれるなどしているらしい。これには「和解も降伏もない! 体制を倒す!」といったスローガンが掲げられているそうである。

この領域の行政機構は、トルコの調整機関によって管理されているが、その調整機関はシリアと国境を接するトルコ各県の地方行政官らによって運営されているとアクフラット氏は明らかにしている。これでは、その領域が何だかトルコ各県の延長上にあるかのように思われてしまう。

それから、トルコが直接支配していないタハリール・アル=シャームの占領地域イドリブでも、トルコリラが流通しているという記述にも驚かされた。

いずれにせよ、アクフラット氏によれば、シリア政府と対立していたトルコは、ようやく国益に沿った正しい方向へ歩み始めたということになる。

果たして、アクフラット氏が言うように、トルコはシリア政府との関係修復へ向かうのだろうか? 

その過程では、もちろんエルドアンとアサドの会談も実現するはずだ。成り行きを注目してみたいと思う。