メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

危険な野良犬?

12月26日付けのハベル・テュルク紙のコラムで、ジャーナリストのナゲハン・アルチュ氏(女性)が危険な野良犬の問題を取り上げている。

ガジアンテプで4歳の幼女が2匹のピットブル犬に噛まれて重傷を負う事件が起きたため、野良犬の危険性を指摘する世論の声が高まると、エルドアン大統領は野良犬を捕獲して保護施設へ送り込むよう指示を出した。

これに対してアルチュ氏は、野良犬の保護施設を備えている行政府など殆んどないことから、野良犬の捕獲は殺処分に至ってしまうと反論している。

私はトルコで野良犬・野良猫がとても大切にされて来たように感じていたけれど、アルチュ氏によれば、2004年まで各行政府は公然と毒餌の費用を予算に計上していたという。

これに歯止めをかけたのは、他でもないエルドアン首相(当時)の尽力によって成立した動物愛護法だったが、行政府に対して強制力を持たないこの法律は、それほど野良犬たちのためにはならなかったらしい。法が成立した後も野良犬たちが秘かに捕獲・殺処分されてしまう事態は続いていたそうだ。

そのため、アルチュ氏は、野良犬に避妊処置を施し、殺処分せずに野良犬の増加を防ぐべきだと主張している。

私は野良犬の耳に付けられた色違いのタグを見て、狂犬病予防と避妊処置の区別でもあるのかと思っていたけれど、あれはどうやら狂犬病予防に限られていたようである。

この数年の内にも野良犬は増加の一途を辿り、イスタンブールだけでも10万~15万の野良犬が生息しているという。郊外の山中には、大きな野良犬(というより野犬か?)が群がっていて少々剣呑な雰囲気になっている所もあった。

しかし、10万~15万の野良犬に避妊処置を施して行くのは至難の業だろう。

そもそも、4歳の幼女に重傷を負わせたのは、放し飼いにされていたピットブル犬で所有者は既に逮捕されたと伝えられている。

このYouTubeの動画でも見られるように、僅か数カ月前、イスタンブール市内を電車や船に乗って移動するボジという野良犬の愛らしい姿が評判になっていた。

郊外の山中はともかく、市街地をうろついている野良犬は皆大人しく、私は危険を感じた覚えがない。

アルチュ氏は、動物愛護で知られているエミネ夫人ならエルドアン大統領を説得できるなんて書いているけれど、果たしてどうなるだろう?

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