メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコと中央アジア:「チュルク諸国機構」

先月、トルコ・アゼルバイジャンカザフスタンウズベキスタンキルギスの首脳がイスタンブールに集まり、この5か国が「チュルク諸国機構」という名称のもとに、新たな一歩を踏み出すことで合意した。

カザフスタン出身のジャーナリストで、現在はトルコを中心に活動しているナズギュル・ケンツェタイ氏(Nazgül Kenzhetay)は、以下のYouTubeの動画で、この「チュルク諸国機構」の意義を熱っぽく語っている。

ケンツェタイ氏は、中央アジアのチュルク語系諸国とトルコの間にある宗教・言語・文化・歴史の深い関係、絆を強調している。

ところが、トルコでは以下の駄文にも記したように、オスマン帝国東ローマ帝国の後継と位置づけ、現在のトルコ共和国トルコ人もその後継者であるかのように語る識者も少なくない。

しかし、中央アジアと言語的にかなり強い結びつきがあるのは確かだと思う。

日本では、日本語の方言と見做されている言語でも、沖縄語や東北地方の各言語のように、いくら聞いても『何処の外国語だろう?』と首を傾げてしまうほど大きく異なっている例が見られるけれど、チュルク語系諸語の場合、ウズベキスタン辺りまでの言葉なら私が聞いても所々何を言ってるのか解ったりする。

少なくとも『何処の外国語だろう?』と思ってしまうほどの隔たりは感じられない。

トルコ語との隔たりが最も感じられるのは、カザフスタンキルギスの言葉だが、それでもカザフスタンの人たちは、ケンツェタイ氏がそうであるように、驚くほど短期間にトルコ語をマスターしてしまう。

そもそも、チュルクもトルコもトルコ語では「Türk」であり、チュルク語系諸語を「トルコ語系諸語」と言い表しても誤りとは言えない。何故、チュルクとかトルコとか表記しているのか、その方が不思議である。「Türk」の発音に最も近い「テュルク」で統一しても良いのではないかと思う。

トルコ語系諸語がこれだけ近似性を保っているのは、同一の元の言語が分岐してから、それほどの年月が経過していないためだと言われている。トルコ語系諸語を話す人々は、かなり短期間にユーラシア大陸の各地へ拡散したらしい。

いずれにせよ、言語的な近さは、人々の交流を容易に促進させる。

現在、中央アジアで経済活動を繰り広げているトルコ人の実業家たちも、そのエスニックルーツを質せば様々だろう。しかし、クルド系の実業家がカザフスタンのビジネスパートナーに「トルコ人同胞!」と呼びかけても何の違和感もないのである。

「チュルク諸国機構」の会議には、オブザーバーとしてハンガリーも参加したそうだけれど、将来、ギリシャオスマン帝国以来のトルコとの絆を手掛かりに、中央アジアとの関係を主張したとしても驚いてはいけないと思う。