メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

カザフスタンの混乱

カザフスタンの混乱は、今後どのように推移するのか全く予断を許さぬ状況であるようだ。

その背景についても様々な説が飛び交っていて、いったいどうなっているのか皆目見当がつかない。

トルコのメディアを少し見ただけでも、「カザフスタンに影響力を行使したいロシアが画策した」とか「トルコ・ロシア・中国の連携を遮断したい米国の陰謀」であるとか、それぞれに大きく異なる論点がいくつも示されている。

実際、トルコは1ヵ月ほど前に立ち上げたばかりである「チュルク諸国機構」の問題に対して、もっと積極的に動いても良さそうに思えるけれど、今のところ非常に慎重な姿勢を見せている。おそらくロシアとの関係を悪化させたくないのだろう。

また、カザフスタンは「一帯一路」の要に位置しているため、中国が混乱の収拾を切に望んでいるのは確かであるかもしれない。

サバー紙のベルジャン・トゥタル氏は、2022年の世界の展望として、「新しい世界の担い手であるトルコ・中国・ロシアが、お互いに、そして他の国々との結びつきを深めて行くのに対して、西欧諸国の中に見られるブロック化と分裂は、米国の外交をより困難にして行くように思われる。・・・」と記していたものの、カザフスタンの展開を見たら、分裂の危機に直面しているのは「トルコ・中国・ロシア」の方である。

トゥタル氏が次回のコラムでカザフスタンの問題に言及するのか注目したいところだが、トゥタル氏は、以下の1月6日付けのコラムでも、西欧の衰退を論じている。

この記事の最後の部分はちょっと興味深かった。

「西欧のエリートは、レトリックの奇術を駆使して、敗北を覆い隠し、国家の無機能の代価を、社会とポップカルチャーに負わせる狡猾さを見せている。こうして、劫掠による経済システムの弊害は、カルチャーと大衆の責任であるとするオリエンタリズムへ傾いているのだ」

しかし、社会の問題をポップカルチャーの所為にしようとするのは、中国やロシア、そしてカザフスタンのような専制主義的国家に見られる傾向じゃなかっただろうか?

トルコでも、イスラム的な保守層がそういった傾向を見せて来たように思う。トゥタル氏は保守的なトルコ東部の出身であり、イマーム・ハティップ(イスラム導師養成高校)を卒業しているそうだ。現在の趣向は良く解らないが、ポップカルチャーに対して、あまり理解があったようには思えない。

とはいえ、トルコには、イスラムの信仰を維持しながら、ポップカルチャーを楽しむ若い世代も出現している。

こういったトルコの世代間の変化を考えると、カザフスタンなど旧ソビエトの国々にも相当な世代間の隔たりがあるのではないだろうか?

ソビエトの時代に育った世代と独立以降の世代は、様々な面で異なって来ているはずだ。

それが悪い方向に作用するのではなく、新しい世代がカザフスタンの未来を切り開いて行くことを期待したいと思う。

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