メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

質素倹約派と贅沢三昧派?

ネパール人就学生らと接していて、もう一つ気になることがあった。平気で食べ物を捨てる人が多いのである。コンビニで買い込んで来たパンや弁当を送迎車の中で食べ、半分近く残してゴミ箱へ入れてしまう者もいた。

あまり「もったいない」という感覚がないように思えた。まあ、日本でも食べ物を粗末にする人は増えたけれど、「残さず食べるのが礼儀」という認識は変わっていないはずだ。

これが中国の場合、「客人は食べ残すのが礼儀」ではなかったかと思う。韓国もそうである。残さず食べてしまったら、「量が少なかった」ということになるらしい。

中国は、清朝の時代にも人口がどんどん増えてしまったように、もともと豊かな農業生産によって繁栄した帝国だった。これに対して、日本の人口は江戸時代に殆ど増えなかったという。貧しい島国であり、そのために「もったいない」という質素倹約の発想が生まれたのだろう。

李朝時代の韓国が、農業生産の面でそれほど豊かであったとは思えないが、ネパールやインドも、かつては非常に豊かな地域だったに違いない。今でも、あの地域に3億ほどの人口しかなかったとしたら、人々はかなり贅沢に暮らせるのに、中国と同様、人口爆発でにっちもさっちも行かなくなってしまった。

中国やインドといった古の文明地域は、豊かさを背景にして豪華絢爛たる文明を築き上げ、人々は長い間贅沢三昧を楽しんで来たので、近代に至ってからの凋落にも拘わらず、あまり質素倹約は身につかなかったのかもしれない。

中国は、文化大革命とか色々やってみたのに、経済発展を成し遂げたら、たちまち元の贅沢三昧へ戻ってしまったかのように見える。

ところが、その中国が追い落とそうと躍起になっている現在の覇権国アメリカのアングロサクソンは、見かけによらず結構質素倹約的な面もあるような気がする。元々、寒くて陰気なイギリスという貧しい島国を背景にしているため、見栄を張って豪華に飾り立てても、食文化は相変わらず貧しく、やはり日本と同様「残さず食べるのが礼儀」になっているのではないだろうか。

良家の子弟は、教育の過程で質素倹約を叩きこまれ、厳しく育てられるらしい。富豪の家に生まれたトランプ大統領も子供の頃には新聞配達をやらされたという。アングロサクソンの覇権が長く続いている秘訣は、この辺にありそうだ。

現在、アメリカを中心とする世界秩序は確かに動揺しているものの、崩壊の兆しがあるわけじゃない。中国の人たちも、贅沢三昧を止めて質素倹約を身につけないと覇権を手にするのは難しいと思う。

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