メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコ人・イスラム教徒

10月11日付けカラル紙のコラムで、イブラヒム・キラス氏が、「トルコ人」とは何であるかについて論じていた。
キラス氏によると、オスマン帝国の時代、現在の「トルコ人」に相当していたのは、帝国内の「イスラム教徒」であり、当時、西欧の人たちが「トルコ人」と呼んでいたのも、このイスラム教徒のことだったという。
これは、特に珍しい説ではない。ここでも、そういった論説を何度か取り上げてきた。既に、広く一般に受け入れられているのではないかと思う。
というのも、2週間ほど前だったか、テレビドラマのエキストラに駆り出され、待ち時間に、他のエキストラの連中と茶飲み話をしていたところ、そのうちの一人が、「トルコ人というのは、エスニックの民族じゃありませんよ。イスラム教徒の国民のことです」と事も無げに説明したのである。
25~30歳ぐらいの青年で、宗教傾向が強そうな感じでもなければ、左派的な雰囲気もなかった。多少、芸能・演劇に興味を持っている何の変哲もない青年だった。
私と彼の他にも3~4人いたけれど、誰も異議を唱えない。25年前なら、かなり議論になっていたと思うが、もうありきたりな話なのかもしれない。
トルコ人」をエスニックな民族として語っていたのは、他ならぬトルコ人であり、欧米の専門家も、オスマン帝国イスラム教徒が、共和国になって「トルコ人」と括られるようになったことぐらい百も承知していたのだろう。
そのうえで、イスラム教徒らの団結を妨げるため、100年以上に亘って、「クルド民族の独立」を提起し続けて来たに違いない。だから、今更、「トルコ人とはイスラム教徒のことです」と説得を試みたところで、彼らの干渉は防げそうもない。彼らに対抗できる力を養うよりないような気がする。
救国戦争も、アタテュルクらが欧米を説得して退けたのではなく、武力によって撃退したのではなかっただろうか。
また、「トルコ人」が、即ち「イスラム教徒」であるなら、そのイスラムを骨抜きにしてしまえば、団結を妨げ、分裂させることができる。このため、「イスラムはおぞましい特殊な宗教である」といったプロパガンダも、執拗に繰り返してきた・・・。
アタテュルクが、イスラムの思想に対して一定の改革を行いながらも、宗務庁を設立して保全に努めたというのは、これを見抜いていたからだと思う。

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