メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

パイプラインで供給される天然ガス

プーチン大統領は、トルコからの農産物輸入禁止処置も解除すると明らかにしていたけれど、あの対トルコ経済封鎖はいったい何だったのだろう?
もしも、本気でトルコに制裁を加えるつもりなら、天然ガスの供給を停止するのが最も効果的だったように思える。それをやったら、ロシアも経済的な損失を被るから出来なかったと説明されているものの、何だか腑に落ちない。
昨冬は、今にもトルコとロシアが開戦するのではないかと色めき立っていたが、その間もロシアとトルコを結ぶパイプラインには、天然ガスが流れ続けていたわけだ。ひょっとすると、情報等も流れ続けていて、意思の疎通は図られていたのかもしれない。
昨年12月の段階では、ロシア危機に備えて、来冬は北イラクからも天然ガスが供給されると発表されていた。
あの話もどうなったのか良く解らない。今冬は、北イラクからも天然ガスが流れて来るんだろうか? というより、当時、私は北イラクから天然ガスが供給されていない事実を知って驚いていた。
そもそも、中東の産油国に隣接しているトルコが、ロシアの天然ガスに頼っていたというのも何だか妙である。いずれにせよ、石油・天然ガスを輸入に依存しているトルコは、その供給が停止された場合、たちまち経済麻痺に陥ってしまう。
トルコはNATOの一員であり、アメリカの同盟国であるはずだが、そのアメリカは、シリアのクルド勢力を支援していて、最終的にはトルコの分割を目論んでいるのではないかと言われている。
それでもトルコは、軍事、経済、エネルギー供給の肝腎な部分をアメリカに握られているため、真っ向から歯むかうわけにもいかない。ロシアとの関係を深めたりしながら、なんとか独立国としての立場を守ろうとしているように見える。
「今やロシアは、中東の重要なバランス要素だ」と主張する識者もいる。さもなければ、中東はアメリカの思い通りになってしまう、と言うのである。
ロシアがバランス要素に成り得るのは、強大な軍事力を有しているからで、実際、その力を行使して見せつけている。これはアメリカも同様。軍事力、経済力、技術力の全ての面で劣るトルコは、双方の顔色を窺うよりないらしい。
しかし、日本も戦後一貫して、アメリカの強大な軍事力のお陰で、効率良く石油・天然ガス等の資源を調達しながら、その繁栄を維持してきたのではないだろうか?
「暴力に依存している」と言っても、それほど大きく間違ってはいないと思う。