メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

エキストラ配給エージェント

パンドラ書店は、自爆テロの現場から200m以上離れているのではないかと思うけれど、エキストラ配給エージェントの事務所は、おそらく100mも離れていない。
書店へ行ったついでに、事務所を訪ねて、女社長のテュルキャンさんに、「大変でしたね」と挨拶したら、なんだか憔悴し切った様子で、「まだショックから立ち直っていないのよ」と力なく答えた。
ちょうど現場の前を通って事務所に着いた直後、あの爆発があったというから、確かにショックは大きかったに違いない。「もの凄い振動で、天地がひっくり返ってしまったんじゃないかと思ったわ」と怯えたように話す。
テュルキャンさんは、亡くなった観光客らの姿も見ていたそうだ。「あの人たちが死んでしまったなんて、本当に可哀そう」と声を震わせる。
『そんな恐ろしい目に合っても、事務所を休めないのだから大変だなあ』と私もここまでは同情を禁じ得ないように感じていた。
ところが、その後である。
テュルキャンさんは、スマホで何か探しながら、「マコト、自爆犯の顔、ニュースとかで見た? 私、多分、あの顔もイスティックラル通りで見たような気がするのよ」と言い、それから、「あっ、これこれ、この顔よ」とスマホを私の目の前に差し出したけれど、私はそれを見て思わず「うっ!」と呻きそうになった。
スマホの画面には、路上に転がっている自爆犯の首が写っていたのである。首は胴体からかなり離れた所に転がっていて、顔がこちらの方に向いている。確かに男の人相は、その写真から良く解る。
爆発直後に、近くの商店の人が撮影した写真が、ネットで配信されたらしい。他にも、自爆犯の首が無くなった胴体(というより腕や肩の辺りだけで、その下も無い)であるとか、犠牲者の方たちのバラバラになった遺体の写真もあった。
『おいおい、こんな写真を見ていながら、“ショックから立ち直れない”とはどういうことだ?』と私は半ば呆れてしまったが、このぐらい肝っ玉が据わっていないと、エージェントの社長なんて務まらないのかもしれない。

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