メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

韓国大統領の悲劇

2012年12月の大統領選挙で、韓国の保守派がパク・クネ氏を担いだのは、やはり何としても革新左派の大統領就任を妨げたいという一念からではなかったかと思う。
あの選挙で、対抗馬だった革新左派のムン・ジェイン氏は、故ノ・ムヒョン元大統領の側近中の側近として知られた人物である。
韓国の革新左派勢力の中には、あからさまに北朝鮮を擁護する人もいる。そのため、パク・クネ氏がその知名度を活かして当選した時は、私もホッとしたように感じていた。
今後の展開は、まだ判然としていないが、革新左派勢力が台頭してくるのは、ほぼ間違いないだろう。
2012年の選挙でも、保守派は「他の候補じゃ勝てない」と考えて、パク・クネ氏を担いだに違いないが、次の選挙では、誰を担ぎ出したところで、保守派が惨敗するのは、もう目に見えているような気がする。
ムン・ジェイン氏ならまだしも、韓国の革新左派には、お公家さんみたいな浮世離れした学者タイプの政治家もいて、これがまた結構一般的な人気を勝ち得たりしている。
日本の場合、あまりにも浮世離れしたイデオロギーばかり論じていると、「きれいごと言ってんじゃねえ」などと下種張る私みたいな俗物がたくさん出てきそうだが、韓国の社会はとても高尚にできているらしい。

しかし、今になって思えば、パク・クネ氏も相当に浮世離れした人物だった。
父のパク・チョンヒ(朴正熙)大統領は、韓国へプラグマティズムを導入した政治家と評価されていて、保守派の人たちも、現実的だった朴正熙大統領への思いをパク・クネ氏に託そうとしたのだろうけれど、見事に裏切られてしまったようだ。
また、娘に乗馬を嗜ませるといった高尚な趣味を持つ友人チェ・スンシル氏の胡散臭さに誰も気が付いていなかったのは、なんとも不思議な話であるとしか言いようがない。
ところで、一口に革新左派と言っても、かつての金大中氏は別格のオーラを放っていたし、ノ・ムヒョン氏にもなかなか人間的な魅力が感じられた。高卒で苦学の末に司法試験をパスしたという特異な経歴もさることながら、はったりの効く勝負師的な雰囲気も格好良かった。
自殺してしまったため、人間的な弱さが指摘され、評価を下げたようにも言われているが、私はそう思わない。あの自殺は、勝負師ノ・ムヒョンが仕掛けた最後の大芝居だった、と今でも思っている。
果たして、“悲劇の人”パク・クネ氏は、最後にどういう大芝居を打つのだろう? 残された幕は、もういくらもないような気がするけれど・・・。

*写真:2015年8月のソウル/イナンサン(仁王山)
このイナンサンから、青瓦台(大統領官邸)の方向にカメラを向けることは禁じられていたが、警備中の兵士に是非を訊く前に撮った写真の一つには、小さく青瓦台が写っている。
私のデジカメで、これ以上鮮明に撮ろうとしても無理だが、大きな望遠レンズで撮った写真に、チェ・スンシル氏の顔でも写っていれば大スクープだったかもしれない。

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