メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

韓国の厳しい名分論

韓国は1945年に独立した時点で既に分割された状態だった。しかし、朝鮮戦争の悲劇を経た後、60年代以降に飛躍的な発展を遂げて現在に至っている。 

韓国国内に軍事基地を有する「同盟国」のアメリカは、ここでも抑圧的な態度で疎まれているものの、韓国をさらに分割しようと画策しているわけではないだろう。 

そのため、トルコに比べれば、韓国がそれほど厳しい現実に直面しているとは思えなかった。ところが、ムン・ジェイン大統領の政権は、敢えてその安定した現状を打ち壊すラディカルな変革を意図しているかのようだ。 

それは、これまでにも度々見られた世論操作のための「反日」ではなく、アメリカを中心とする国際秩序から抜け出て、悲願の統一を成し遂げるためのプロセスではないか、という説が論じられているけれど、確かにそういった緊張を感じさせる状況であるかもしれない。 

2017年5月の大統領選挙では、他の左派候補よりムン・ジェイン氏の方が現実的だろうと私は思っていた。政治家としての経歴も長いから、当選すれば現実に合わせて修正を図るのではないかと思っていたのだ。これは実に甘い認識だったと言わざるを得ない。 

2013年の夏、ボズジャ島で、韓国人の友人が「名分からすれば、北朝鮮のほうが国家の正統性があって、はるかに正しい」と論じたのを聞いて私は驚いた。 

友人は、韓国と日本の連帯を望みながらも、「名分を糺さずにはいられない我々の気質を理解してほしい」と語っていたけれど、どうやら私は良く理解できていなかったらしい。 

北朝鮮の正統性を認めるということは、三代続いた金氏の世襲にも異議はないのだろうか? そして、その正統性を維持するためなら、残虐な処刑も容認してしまうのだろうか? 仮にそうであったとしても、これを理解するのは非常に難しいと思う。