メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

幸運な日本の繁栄と平和

《2017年2月12日付け記事を修正して再録》

2017年2月、トルコの時事討論番組で、「戦後の国際秩序が云々」といったテーマを論じていた識者が、「戦後、日本は、アメリカから技術力を与えられたお陰で・・・」などと話していた。
歴史的な事実がどうであったのか、私には良く解らないものの、明治以来の科学技術の蓄積も戦後の復興・発展に寄与していたはずである。それをまるでアメリカのお陰で発展したかのように言うのは、多少やっかみもあるのではないかと思った。

また、明治の時代、アメリカを始めとする西欧各国から、多くの“お雇い外国人”が日本を訪れ、誠意をもって日本に科学技術を伝授したのは確かだが、それを効率良く吸収できた要因として、もともと備わっていた職人の技術や民衆の教育水準の高さを見逃してはならないだろう。
しかし、日本の発展にかなり運の良さがあったのは間違いないと思う。
19世紀の末、西欧列強に抵抗したアフマド・オラービーというエジプトの政治家は、明治維新で日本が近代化に成功したのは、スエズ運河をめぐって絶えず西欧列強の干渉にさらされていたエジプトと異なり、当時、生糸ぐらいしか生産していなかった日本が、西欧列強にとっては、それほど重要じゃなかったお陰であると考えていたらしい。
エジプトと中東の不運は、その後、石油の採掘とイスラエルの建国により、さらに深刻さを増して行く。これはトルコも同様である。
オスマン帝国の栄華に陰りが見え始めて以来、この地域は、それこそ不運と不幸の連続だった。非常に運が良かった日本の繁栄をやっかんでしまうのは当然であるかもしれない。
一方、日本の侵略を受けた中国、独立を奪われてしまった韓国の人々が、日本の繁栄をやっかむどころか、憎悪し恨んでいるとしても、これまた不思議ではないような気がする。
中国のGDPが日本を凌駕したと言っても、一般の民衆は未だ非常に貧しい。韓国も日本より豊かになったわけではない。
特に韓国の場合、日本の敗戦で棚ぼた式に独立を回復してしまったため、未だに「国家の正統性」を確立できずに苦しんでいる。孫文辛亥革命に正統性を求めることができる中華民国とは、この辺りが大きく異なっているだろう。
例えば、韓国が正統性を確立して、自尊心を取り戻す、最も手っ取り早い方法は、日本の独立を奪って意趣返しを果たすことではないのか?
そのため、日本が全く無防備な状態に陥れば、この機会を逃すことなく攻め込んで来る可能性は充分にあるはずだ。同様に、中国が攻め込んで来てもおかしくない。彼らには、意趣返しの正当な理由がある。
トランプ大統領は、「人殺しのプーチンと付き合っても良いのか?」と問われて、「アメリカも無垢ではない。多くの罪を犯してきた」と答えたそうだが、だからこそ、簡単に復讐されないよう、軍事力を強化しなければならないと主張するに違い。
幸運に恵まれ、多くの国々が羨む(あるいは憎む)繁栄と平和を謳歌している日本も、自分たちが犯してきた恐ろしい罪を忘れてはならないと思う。