メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

続・ロシア正教のクリスマス

ミサが終わり、廊下で、ウクライナ人女性の夫であるトルコ人の方と立ち話していたところ、笑顔で近づいて来た老婦人が、ロシア語らしい言葉で、私たちに何か言った。
トルコ人の方が、「食事が用意できているからどうぞ、と言ってるんじゃないかと思います。せっかくだから頂いて行きましょう」と勧めてくれたので、私も遠慮なく、礼拝堂の隣のホールへ行って、食事を御馳走になってしまった。サーモンの塩漬けが付いた、なかなか贅沢な一皿だった。
昨年末、「良い音楽は貧相な食文化のもとに生まれる」とか詰まらないことを口走ってしまったけれど、「ロシアは音楽も美しいが、食事も美味い」に訂正したい。

ホールでは、皆が食事している最中にも、美しい讃美歌を歌う女性たちがいた。ロシア語の讃美歌はとても美しい。長いミサもこれを聴いていると、それほど苦にならない。
食事中、お茶を持ってきてくれた初老の女性に、トルコ語で礼を述べたら、「おお、貴方、トルコ語解るんですね」と驚かれ、「何処の人ですか?」とかいろいろ質問された。
この方は、モルドバの出身だそうだが、モルドバに多い“ガガウズ・トルコ人”というトルコ系の民族ではなく、もともとルーマニア語とロシア語を話していて、トルコ語はトルコへ来てから学んだらしい。
何年ぐらいいらっしゃるのか訊かなかったけれど、トルコ語はなかなか流暢だった。イスタンブールにいるロシアの人たちには、トルコ語を巧く話す人が多い。
モルドバ出身のこの人懐っこい女性は、4年ほどサハリンに住んでいたことがあるという。「サハリンは寒いでしょう?」と訊いたら、「寒くても、私たちの心は暖かいから大丈夫。正教徒の心は暖かいでしょう? カトリックは少し冷たいけれどね」と笑っていた。私も喜んでこれに同意したのは言うまでもない。
実際、正教会はその長い歴史の中で、イスラムを始めとする異教・異文化に触れて来た所為か、それに対する偏見も少ないような気がする。
今日、現在、大騒ぎになっているトルコとロシアの国家間の問題については、全く話題にしなかった。
教会には、ロシア人という括りではなく、ロシア正教会の括りで信徒が集まって来ている。だから、ウクライナ人もモルドバ人も、ここでは皆同じ正教徒である。トルコ人の配偶者を持つ人も多い。
おそらく、トルコとロシアの揉め事で最も迷惑しているのは、この教会に来ている人たちだろう。彼らは、一刻も早く、平和な交流が再開することを願っているに違いない。

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