メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコ版“自虐史観”からの脱却

選挙前日の3月29日、ラディカル紙のコラムで、オラル・チャルシュラル氏は、「政権の寿命が、EUとアメリカの選択によって定められるのは、どれほどノーマルだろうか?」と問いかけ、翌日の選挙の意義を明らかにしていた。
これにトルコの国民は、「政権の寿命は我々が決める」と応えて見せたのだと思う。
トルコに限らず、中東では何処の政権も、おそらく欧米の意志によって寿命が決められてきた。それどころか、国家の成立や国境さえ、欧米が勝手に決めてしまったのではなかったか。
エジプトの状況など余りにも酷すぎる。インターネットのソーシャル・ネットワークで国民が連帯してムバラク政権を倒したなどと大袈裟に喧伝して置きながら、その後の軍事クーデターと圧政は見て見ぬふりを決め込んでいる。
なんだか、最近は、このソーシャル・ネットワークとやらが欧米の強力な武器になっているような気もする。少なくとも、これが“持たざる者の武器”になり得ないのは明白だろう。

世界中で展開している大きなソーシャル・ネットワークを運営するアメリカの企業は、トルコのような国々で、税金も払わなければ、国の法律にも従わないまま、相当な利益を計上しているそうだ。

ソーシャル・ネットワークが“アラブの春”をもたらしたなんて、御為ごかしの典型かもしれない。
その為、今回の選挙結果は、トルコばかりでなく、中東全域にも影響を与えたと指摘する識者もいる。しかし、それはかつての暴力的な反米思想を呼び起こすものではないだろう。
選挙の前だか後だか忘れたけれど、トルコのテレビの討論番組で、ニハール・ベンギス・カラジャ女史が語っていた。「AKPを支持する保守的な民衆は、既に顔を欧米に向けている。しかし、自国の歴史を恥ずかしいとは思っていない」
これは、ある種のトルコらしい伝統的な風俗を恥ずかしがっている「一部の進歩的な政教分離主義者たち」に対して述べた発言じゃないかと思う。 
29日の駄文で、「今回の選挙では、トルコ版の『戦後レジーム(大戦後に欧米の定めた枠組みという意味で)からの脱却』も問われているような気がする。」と申し上げたけれど、これにはもう一つトルコ版“自虐史観”からの脱却も含まれていたかもしれない。

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