メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

私たちの“西洋コンプレックス”

10年ぐらい前、ジャズとロックは「西洋土人囃子」に「西洋獅子舞」、ヨットを「西洋舟遊び」と論い、「何がヨットだ。東京の人間なら隅田川に屋形船でも浮かべて楽しんでろい!」などとメールに書いて、友人らの顰蹙を買ったことがある。
確かに、こんなものは“西洋コンプレックス”の裏返しに過ぎないから、顰蹙を買って当たり前だろう。私たちの“自虐史観”は、戦後になって始まったのではなく、“鹿鳴館”以来のものじゃないかと思う。
トルコでも、かつて、イスラム的な保守層の人たちは、やたらと西欧の文物にケチをつけ、伝統的なトルコの風俗を自慢したりしていたけれど、最近は、余り見られなくなったような気がする。これもAKP政権の12年がもたらした“自信”の表れであるかもしれない。
ジャズやロックを楽しむ“イスラム的な若者たち”も特に珍しくはなくなった。そのうち、クラシックの分野にも進出して来て、ある日、“スカーフを被ったトルコ人女性ピアニスト”が、ウィーン・コンツェルトハウスのコンサートで演奏しても驚いてはならないと思う。
しかし、そうなったとして、これまで西欧の文物の紹介を一手に引き受けていた“進歩的な政教分離主義者”たちは、皆、喜んでくれるだろうか?