メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

続・ペンキ屋のおじさん

ペンキ屋のおじさん、コミュニストだなんて言うから、もともと宗教色の薄いエーゲ海地方の出身なのかと思ったけれど、出身地を訊くと、これがアナトリア東部のシヴァス県なんだそうです。
それで、もしやと思い、「貴方の信仰は?」と探りを入れてみたところ、やはり例の異端派と言われているアレヴィー派でした。もちろん現政権については批判的で、「彼らはアタテュルクが創った共和国を破壊しようとしている」と力説。
しかし、このおじさんの話を聞いていると、アタテュルクもコミュニストであったかのように思えてしまいます。「中国では、毛沢東がアタテュルクと同じような改革を行ない・・・」などと言い出したりするのです。
二人で話していると、おじさんの同僚も割り込んで来て、こちらはアナトリア最東部のカルス県出身というので、「クルド語解りますか?」と訊いたら、この人ばかりではなく、シヴァスのおじさんもクルド人であることが判明。早速、クルド語講座が始まり、二人して色々な言葉を教えてくれたものの、今になって記憶を辿ってみれば何一つ思い出すことができません。
彼らは、クルド語の講座が終ると、「自分たちは、民族を問われればクルド人と答えるだけで、ファナティックなクルド人ではない」と明らかにしていました。
それから、日本や韓国のことが話題になり、カルス出身の同僚は「韓国の人たちが犬を食べるというのは本当なの?」と好奇の表情を浮かべたのですが、シヴァスのおじさんは、「何食べたって良いじゃない。こいつはスンニー派だからうるさいんだよね」と横槍をいれます。
すると、カルス出身はニヤニヤ笑いながらシヴァスのおじさんを指差して、「こいつにウサギの肉が食えるかどうか訊いてみなよ。アレヴィー派じゃウサギの肉が禁止されているんだぜ。変な宗派だねえ」と反撃。
この話には私も驚いたけれど、シヴァスのおじさんも困った顔して、「確かにウサギの肉は禁じられています。でも、基本的にアレヴィーは自由な宗派なんですよ」と苦しい対応、カルス出身は、してやったりとばかり「何が自由な宗派だよ。ウサギも食えないで」と笑い転げていました。
トルコではクルドもアレヴィー派も、ややこしい政治問題になっていますが、中にはこうやって笑い飛ばしている人たちもいるのだから、そろそろ解決を期待して良いかもしれません。