メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

キュネフェの本場はハタイ

5月も半ばというのに、イスタンブールは肌寒い日が続いています。今日はやっと少し暖かくなりました。昨日も天気は良くて、友人のアリとカドゥキョイの街を暫くブラブラしたけれど、セーターを着込んだままで丁度良いくらいの陽気でした。
トルコでは、チャイを沸かすコンロだけ備えて営業しているチャイ屋が、何処の街に行ってもあります。チャイを淹れて近所のレストランや事務所に出前するのです。
カドゥキョイで、歩行者専用になっている街区の一角にあるチャイ屋は、チャイが一味違うと評判になっていて、天気が良ければ、道端のベンチに腰掛け、チャイを出前してもらって飲んでいる人が良くいます。
私たちも、ここに寄って、一服することにしたら、その3人掛けのベンチに、大学生と思しき青年が一人、所在無げに座っていました。おそらく、友人と待ち合わせでもしているのでしょう。アリは、遠慮もなく、青年を端に寄らせると、自分が真中に座り、青年にあれこれ問い始めました。
「君は学生か? 何処の大学?」
「マルマラ大学です」
「ふーん、郷里は何処?」
「ハタイ県のアンタキヤですが、元々はレバノンベイルートです」
「えっ? いつベイルートから来たの? トルコ語はどうやって勉強したの?」
「違いますよ。両親がベイルートから来たんです。僕はアンタキヤ生まれのトルコ国民だから、トルコ語で教育を受けています。最近、アラビア語を忘れかけているくらいですよ」
シリアとの国境に位置してアラブ系の住民が多く、キリスト教徒やユダヤ教徒も珍しくないハタイでは、民族や宗教の対立も見られず、文化的なハーモニーを成していると聞いていたから、私も青年にいろいろ尋ねて、興味が尽きませんでした。
青年は、アラブのアレヴィー派なんだそうです。しかし、それは、アナトリアのアレヴィー派とは、少し違う宗派であるかもしれません。ジェム・エヴィというアレヴィー派に特有の礼拝所もなく、礼拝は何処でも出来ると言ってました。
また、アナトリアのアレヴィー派は、断食もラマダン月ではなく、ムハレム月に12日間だけ行っているけれど、アラブのアレヴィー派は、スンニー派と同じくラマダン月に断食するそうです。
まあ、こういうややこしい話はともかく、ハタイと言えば、キュネフェという菓子が有名だから、私はこれについて、ちょっと訊いて見たくなりました。 キュネフェは、春雨のような細い麺状のものでチーズを包み、こんがり焼いてから甘いシロップを掛けたものです。
しかし、「イスタンブールで、最も美味しいキュネフェが食べられるのは何処でしょうか?」と訊いたら、「イスタンブールには、ありません」と、きっぱり答えられて、がっかりでした。
中に入れるチーズは、ハタイの特種なチーズを使わなければならないけれど、これをハタイから取り寄せたとしても、鮮度が落ちる所為か、本場の味はなかなか出ないそうです。

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