メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

「姫路の美味しい中華」と「高い家賃を払っても商売になる料理店」

銭湯へ行ったりして姫路まで出ると、以前はいつも「餃子の王将」で食べていた。餃子は本当に安くて美味しい。しかし、酢豚や青椒肉絲のような料理は、いまいちパッとしない。そのため、毎回、食べるのは餃子とニラレバに決まっていた。

これではさすがに飽きて来たので、何処かで美味い酢豚が食べたくなり、ネットで探してちょっと高い店に行ったけれど、値段の割にはそれほど美味しくなかった。

こうなると、無性に酢豚が食べたくなる。数か月前、そうやって「酢豚」を考えながら、姫路の街を歩いていたら「新北京」という如何にも老舗風な中華料理屋の前に出たので、試しにそこで食べて見たところ、王将ほどではなくても結構安くて非常に美味かった。

以来、この数か月の間に何度か行ってみたけれど、青椒肉絲や回鍋肉も美味かった。しかし、餃子はいまいちだった。

何故、ネットで探した時は見つからなかったのだろうと、もう一度検索してみたら、随分後ろの方に出て来ることは出て来るが、評価は低い。

それでも、昼時は広い店内がいつも混んでいて、結構繁盛しているようだ。

店員さんに訊くと、今のオーナーが三代目で、それ以前に旅館だった時代も含めれば、その歴史はかなり昔まで遡るらしい。

そのくらいの老舗だから、ネットなど見ない地元の常連さんたちが来てくれるのだろう。ネットの評価が低いと行列が出来ないから、常連さんにとっては却って有難いかもしれない。

シェフは中国から来たそうだが、既に35年になるので、すっかり日本の中華になっていますと店員さんは笑っていた。

確かに、ガチ中華と町中華の間ぐらいで、これといった特徴もない。安くて何を食べても平均的に美味しいといったところである。

広い宴会場もあるという旧館の方は、かなり渋い造りだが、特にレトロ感を出すような工夫もしていない。これではネットの評価が低くても仕方がない。

姫路にはレトロな雰囲気を売りにしている老舗の中華もあって、ネットでも評判のシュウマイを食べてみたけれど、『これならファミマの肉シュウマイをチンして食べた方が安くてよっぽど美味いなあ』という感想しかなかった。しかし、レトロな雰囲気は確かに良かったかもしれない。

「新北京」の三代目オーナーには余り商売っ気がないようである。おそらく、あそこは先祖代々の土地で家賃も払っていないだろう。だから、廉価でそこそこの料理を提供できるのだと思う。

30年ぐらい前、友人から以下のような話を聞いた。

都内の繁華街で長年にわたり自分の持ち家でラーメン店を営んでいた老夫婦が寄る年波に勝てず、店を閉めて隠居することになった。自然の素材で丹念に出汁を取ったラーメンは非常に美味しかったそうだ。

そこへ不動産屋の営業マンがやって来て、『店舗の部分をテナントで賃貸に出しませんか?』と持ち掛けた。

隠居する老夫婦には充分な住居の棟もあったので、特に家賃収入など期待することもなく承諾したところ、テナントにはチェーンのラーメン店が入って来たという。

それから、1年だか数か月だか過ぎて、老夫婦のご主人が友人にぼやいたそうである。

「世の中には不思議なことがあるものだ。今、何もしていないのに月々家賃の収入が入って来るのだけれど、その収入は、私たち夫婦が一生懸命ラーメン作って売り上げた収入より多いのだよ。あのラーメン店はそれだけ家賃を払いながら、どうやって利益を上げているのかねえ?」

友人は「化学調味料で済ませれば、ラーメンの原価など高が知れているから充分儲かっているのだろう」と笑っていたが、そのラーメン店で食べているお客は、ラーメンの代金というより家賃を払わされているようなものだろう。

まあ、高い家賃を払っているような店は、なるべく避けた方が無難であるかもしれない。