メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トランプ大統領は平和主義者?

若き日のトランプ大統領は、ベトナム戦争への徴兵を再三にわたって回避し、結局、兵役を免れていたらしい。

ベトナムの勇者」である故マケイン氏が、トランプ氏をどう見ていたのか何となく解るような気もする。父祖の代から軍人である家系のマケイン氏は、自身がベトナムで生死の境を彷徨ったにも拘わらず、子息をやはり軍人にさせたという。私は、この辺りにアメリカという国を支えて来た質実剛健の気風を感じてしまう。

しかし、ベトナム戦争とはいったい何だったのだろう? あの戦争は、ベトナムを地獄に陥れたばかりでなく、一方の米国にも何ら利益をもたらさなかったように思えてならない。それどころか、膨大な戦費を無駄にして、多くの米国軍人を死に追いやってしまった。言葉は悪いが、確かに「犬死」だったような気もする。

「大中東プロジェクト」に基づくイラク戦争とその後の混乱では、中東の人々が被った人的・物的損害に比べて、米国のそれは微々たるものであるかもしれないが、やはり相当な戦費を投入し、軍人を死に至らしめ、どれほどの成果が得られたのだろう? 石油利権の獲得などが言われているけれど、おそらく損害の方が大きかったのではないかと思う。

ISの蛮行も、実のところ、犠牲者の大多数は中東から出ていたとはいえ、米国人等々ばかりか日本人も犠牲になっている。多くの国々が被害に合って、何処もそれに見合うだけのものが得られなかった・・・。

中東を破壊し、トルコ共和国をも分割しようと試みたのではないかと言われる「大中東プロジェクト」なるものは、結局、方々に被害をもたらしただけだった。わけても米国が被った損害は少なくなかっただろう。

ところが、その過程には、共和党民主党も関わっていたため、いずれもその責任を追及しようとはしない。2016年の大統領選挙に至るまで、マイケル・フリン氏が「プロジェクトの失敗と中東からの撤収」を主張しながら、トランプ氏以外に有力な同調者を見出すことが出来なかったのだとしたら、その辺りに要因があったのかもしれない。挙句の果てには、四方八方から袋叩きにされてしまった。

ところで、元軍人のフリン氏は、2016年の大統領選挙に至る過程で、トランプ氏と話し合いながら、かつての「徴兵回避」についてはどう思っていたのだろう? トランプ氏がベトナム戦争を拒否したのは、あくまでも「国益を損なう戦争」だったからであり、フリン氏もそう判断していたのであれば、トランプ氏を「愛国的な平和主義者」と理解するのも可能であるということかもしれない。

しかし、あの選挙でトランプ陣営が「平和主義」ばかり強調していたら、ヒラリー氏を相手に勝利するのは難しかったに違いない。選挙戦の陳腐なスローガンなどに大した意味はなかったと思う。

大統領就任後の常軌を逸した言動に関しても、サバー紙のメフメット・バルラス氏は、「他国でのクーデター等を企図してきたCIAもトランプ大統領の常軌を逸した言動に困惑して行動を控えているのではないか」と分析していた。

ひょっとすると、トランプ大統領にはそれなりの計算があって常軌を外して見せていたのではないだろうか?

まあ、こういった裏事情の真偽が明らかになることは将来にわたってないかもしれない。

いずれにせよ、バイデン氏が大統領になったところで、「大中東プロジェクト」を再開させるなんてことは難しいはずである。おそらく、過去の責任等をうやむやにしたまま幕引きを図るのではないか? そのように祈りたい。