先日、JR三ノ宮駅のホームで、電車から降りる車椅子の乗客を2人の駅員が手伝っている光景を見た。
まず、電車とホームの間に専用のプレートを敷き、その上を通して慎重に車椅子をホームに降ろし、駅員の1人が先導する後を、もう1人の駅員が車椅子を押しながら階段の方へ向かっていた。車椅子を押す若い女性の駅員は、終始、にこやかに乗客に話し掛け、乗客の方も恐縮した様子でそれに応じていた。
2017年に帰国して以来、何度か同じような光景を目撃しているけれど、トルコでは全く見たことがない光景である。何故なら、駅員や乗務員が来なくても、周囲の乗客たちが皆で手伝って事を済ませていたからだ。
電車であれば、プレートなど用意するまでもなく、数人が車椅子を持ち上げて「よっこらしょ」と降ろしてしまう。段差のあるバスなら、添え付けのプレートを倒して車椅子を誘導する。プレートの倒し方は、乗務員に訊かずとも、大概の乗客たちが心得ている。私も何度となく試みたことがある。
日本でも、駅員が来なければ、手伝う乗客が現れそうな気もする。しかし、安全の確保といった問題もあり、「駅員に任す」というのが常識になっているのかもしれない。
とはいえ、例えば、一度に複数の車椅子の乗客が異なる車両から降りる時はどうするのだろう? そもそも、駅員は車椅子の乗客についての情報を何処から得ているのだろう?
おそらく、乗車した駅から、駅員が付きっきりで手伝っているに違いないが、その労力は決して少ないものではないし、駅員の到着を待つ間、電車も出発を見合わせたりしているのではないかと思う。
トルコの電車は、車椅子の乗客が乗車していることなど乗務員が全く関知しないまま運行されているような気がする。「必ず周囲の乗客たちが手伝う」という了解があるから、特に処置の仕方も講じていないだろう。社会的な常識としても「周囲の乗客が手伝う」のは当たり前であるし、皆が手伝ってくれるから、安全確保の面でもそれほど問題は生じないと考えられているのかもしれない。
どちらが良いのか解らないが、トルコでは車椅子で公共交通機関を使いながら移動している人たちを頻繁に見る機会があった。日本の場合、大掛かりな処置に恐縮して、車椅子の人たちが積極的に公共交通機関を利用していないのではないか、そんな風に思えるほど同様の機会が少ないように感じてしまう。