メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコの人たちの衛生観念

トルコでは、何処の田舎へ行っても、“汲み取り便所”を見たことがなかった。昔から牧畜が盛んだった為、下肥など作る必要はなかったのかもしれない。
エフェソスの遺跡には、当時の水洗式“公衆便所”も残っている。オスマン帝国時代の歴史的なモスクやハマム(トルコ風呂)の構造を見ても、便所は当時から水洗だったと思われる。

イスタンブールイズミルのような都市は、相当昔の時代から水洗が当たり前だったのではないか? 都市文明の歴史は、日本と比べ物にならないくらい古いのである。
トルコの人が日本へ行き、初めて“汲み取り便所”に遭遇した時は、度肝を抜かれたに違いない。驚きのあまり、用を足せずに困った人もいるだろう。
トルコの都市住民の衛生観念は、ビザンチン帝国~オスマン帝国の時代から、かなり高かったはずだ。しかし、農村部ではそうでもなかったような気がする。
22年前、初めてトルコにやって来た頃は、バスなどで、隣に凄く匂う人に座られて閉口したことがある。当時は、長距離バスでも、靴を脱ぐのは固く禁じられていた。足の臭い人が多かったからだ。私が靴を脱ごうとしても、乗務員や周りの乗客から凄い勢いで注意された。
靴を脱いで入るモスクの中もプーンと匂っていたりした。信者の方たちは、入る前に、足も洗う“清めの儀式”を行なっているけれど、足を濡らして、そのままいつ洗濯したのか解らない臭い靴下を履くのだから、何の効果もなかった。
それが、この10年ぐらいで大分変わってきた。まず、長距離の旅に航空機の利用は珍しくなくなった。飛行機の座席では、靴を脱いでも文句を言われない。脱いだ足が臭い人も殆どいない。モスクも、少なくともイスタンブールであれば、それほど匂わなくなった。
もう今のイスタンブールで、私より衛生観念が欠如した人を探し出すのは、結構難しいかもしれない。生活水準と同様、ここでも私はトルコの平均以下だろう。