メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

バスに纏わる事件

10日ほど前だったか、ショートパンツをはいていた女性が、バスの中で男に蹴られるという事件があった。

犯行に及ぶ際、男が「イスラムの教義に相応しくない服装をしているから罰を与えてやる!」と叫んだとか、連行された後に、一旦釈放されてしまうといった不手際があったため、しばらくの間、メディアを騒がせていた。

この騒ぎに対して、テレビの討論番組である女性ジャーナリストは、「ちょっと頭が変になった男の犯行でしょ? それを一般化して大袈裟に論じる必要があるの?」と疑問を呈していたけれど、確かに盛り上がっていたのは一時だけで、もう忘れ去られてしまったような気もする。

さすがに、寒くなったから、イスタンブールでは見かけないかもしれないが、今でも暖かい地中海沿岸地域などへ行けば、ショートパンツやミニスカートの女性が当たり前な顔して街を闊歩しているだろう。私も少し大袈裟な取り上げ方じゃないかと思った。

さて、バスと言えば、先日は、メトロビュスという専用レーンを走るバスが一般車線に飛び出して、2~3台の乗用車の上に乗り上げるという大事故が起きている。

こちらも、乗客の男が、バスの運転手を雨傘で引っ叩いた為に発生したという事件性のため、幸い死者は出ていないものの、対策等が論じられるに至った。

しかし、この乗客の男にしたって、「ちょっと頭が・・・」という部類であり、わざわざ論じるまでもないと思うが、当局は、大真面目に対策を講じているらしい。バスの運転席を透明なプラスチックボードで覆って、運転手を乗客などによる攻撃から守るというのである。

ところで、これは本当に運転手を攻撃から守るための対策なんだろうか? 私は、他の目的があって、当局が以前からボードの導入を検討していたのではないかと疑っている。

私の勝手な想像に過ぎないが、その目的とは、運転手がハンドルを握りながら、運転席に入り込んだ乗客(?)や同僚とべらべら話し続けるのを防ぐためであるような気がしてならない。

実際、私も「いい加減にしろ!」と叫びたくなるほど、そういった光景を目にしてきた。運転手の肩に手を回して、じゃれ合うように話しかける乗客(?)、これに応じて、ゲラゲラ笑いながらアクセルを踏み込む運転手、こんな場面も決して珍しくない。

ボードで覆ってしまえば、これは防げるようになるだろう。後は、運転手から携帯を取り上げなければならない。

運行時間が長くて、厳しい労働条件にもかかわらず、中には親切な運転手さんも多いけれど、やっぱり運転中のお喋りは止めてもらいたいと切に願う。

トルコには、「黒海地方を東へ行けば行くほどお喋りな人が多くなる」という俗説があって、以下のような小話も出回っている。

黒海地方のサムスンへ行くと、バスの車内に「運行中、運転手に話しかけないで下さい」と注意書きが記されている。

この注意書きは、東へ進むにつれて、どんどん言葉遣いが厳しさを増し、トラブゾン辺りまで来ると、「絶対に話しかけるな!」という具合になる。

そして、東端のリゼでは、これが「運行中、話しかけてくる運転手に、絶対に返事をしないで下さい」と変わってしまう、という落ちがつく。