前回お伝えした通訳業務は昨日で終わり、送迎ミニバスに乗るのも昨日が最後だった。
朝、交差点で待っていると、周囲の人たちとも何となく顔馴染みになっているのに気がついた。その交差点には、実に様々な会社や学校の送迎が止まる。後部に大きく“学校送迎”と書いてあるのに、前面には有名なグローバル企業の名前が記されたミニバスも来る。毎朝、このミニバスに乗り込んでいく2人組みの顔は、もう良く覚えてしまった。他所で会っても解るんじゃないかと思う。
日本で、送迎バスと言えば、会社と最寄の駅を往復するぐらいだろうけれど、トルコの送迎は、かなり遠い所まで従業員を迎えに行く。企業にとっては、相当な負担になっているかもしれない。
クズルック村の工場では、女子従業員が残業で夜遅くなった時は、各々の家の前まで送って行く決まりになっていた。この場合、同じ方面に帰る女子が5人もいれば、最後の一人は家に辿り着くのが、大分遅くなるばかりでなく、暫くの間、バスの中で運転手さんと2人きりになってしまう。
ある運転手さんの話によると、娘の帰りを待ちわびた父親が家の前で待ち構えていて、バスの中に2人しかいなかったのに気がつくや、運転手さんに銃を突きつけ、「俺の娘に何もしなかっただろうな?」と詰問したこともあったそうだ。まあ、イスタンブールでは、そこまでする父親もいないと思うが・・・。
さて、昨日の朝、送迎が止まったので、後ろの座席に乗り込もうとしたら、運転手さんは、助手席のドアを開け、「こっちに乗れ」と手招きする。いつも助手席には営業部の男が座っていたけれど、昨日、彼はマイカー通勤だったらしい。
私が助手席に乗り込んで走り出すと、運転手さんは、「この席に座りたがる奴は余りいないんだ」なんて言ってから続けた。「何故かと言えば、この席に座った奴は、大概、その後で首になってしまうんでね」。
これに答えて、「それは大当たり。私も今日で最後だよ」とやり返したら、車内爆笑だった。