メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

アルファゴVSプロ棋士

先週、韓国は人工知能囲碁プログラム“アルファゴ”とイ・セドル九段の対局で大分盛り上がっていたようだ。ネットで視聴できる「KBSの9時ニュース」も毎日詳細に対局を伝えていた。
アルファゴの「ゴ」は即ち「碁」であり、囲碁は世界の何処へ行っても「ゴ」で通じるらしい。トルコでも「ゴ」と呼ばれている。
もちろん、古い中国語の発音に由来するのだろうけれど、現在の中国では「Weiqi(囲棋)」と言うそうなので、「ゴ」は日本の碁から世界へ広まった言葉であるかもしれない。韓国では「パドゥク」と言う。
本家本元の中国としては、口惜しい限りに違いないが、単なる嗜みではなく「プロの競技」として発展させたのが日本であったために、こうなってしまったらしい。
しかし、現状は、アルファゴと対局したイ・セドル九段が「世界最強の棋士」と伝えられているように、日本は既に韓国や中国の後塵を拝しているのではないだろうか。
87~88年、韓国に滞在していた頃も、裾野の競技人口は、日本よりも韓国の方が遥かに多いと感じた。街の至る所で、碁を打っている人たちの姿を見ることができた。そして、中国の競技人口は韓国のそれを軽く凌駕しているはずだ。日本が太刀打ちできなくなったのも無理はないかもしれない。
私に碁の嗜みはないが、40年以上前の有力な棋士の名前なら、今でも良く覚えている。子供の頃、父が休日にテレビの囲碁番組ばかり観ていたからである。
父はアマチュア4段で結構強かったらしい。でも、「碁なんてものは、他人が打っているのを脇で見て覚えるもんだ」とか言いながら、決して私たちに教えようとはしなかった。将棋の手ほどきはしてくれたのに、何故だか良く解らない。
その頃覚えた棋士の名で、忘れようがないほど脳裏に刻まれているのは、なんと言っても「呉清源」と「趙治勲」である。呉清源の名は、「凄い人だ、凄い人だ」と繰り返し聞かされたため、何だか私の頭の中にも「畏敬の念」が生じていたような気がする。
趙治勲の名も、おそらく小学校低学年の頃から聞き続けて、「若き大天才」というイメージで脳裏に焼き付いた。それで、趙治勲氏の年齢は少なくとも私より一回り上に違いないと思い込んでいたけれど、いつだったかネットで色々調べていて、趙治勲氏と私の間にたった4年しか歳の差がないことを知って愕然とした。
趙治勲氏は、僅か6歳で親元を離れて来日し、プロ棋士を目指して修業を積んだそうである。私が子供の頃にテレビで観ていたのは、多分、14~5歳の趙治勲氏だったのだろう。もともと桁違いの人物とはいえ、なんと壮絶な人生なのかと溜息が出てしまう。
ところで、先週のアルファゴとイ・セドル九段の対局だが、KBSのニュースは、私が見た限り、日本の反応を全く伝えていなかった。日本の有名な棋士が対局会場を訪れていたという話も聞いていない。インタビューに答えていたのは、中国と西欧の棋士だった。囲碁の世界で日本はもう蚊帳の外なのかと心配になる。
中国、韓国に明らかな差をつけられてしまったのだから、今度は日本の方が挑む姿勢を見せなければ、ずるずると後退してしまいそうだ。
趙治勲氏のように、「6歳で・・・」というわけにも行かないけれど、若い有力棋士が韓国や中国へ武者修行に出かけたりする例はないのだろうか?
その点、野球の選手たちはなかなか凄いと思う。次から次へと果敢に大リーグへ挑戦するし、以下の門倉投手のように、ベテランの域に達してから、韓国リーグで再起を図った選手もいる。
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門倉投手インタビュー


6/30 카도쿠라 인터뷰