メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

マルマライ開通

共和国記念日の昨日、ボスポラス海峡を横断する地下鉄“マルマライ”の開通式が、アジア側の拠点となるウスクダル駅前の広場で催された。
その海峡トンネルの部分は、日本の企業が設計・施工を請負ったことから、安倍首相も招待されて臨席していた。
開通式を“共和国記念日”に間に合わせる為、開業する各駅の工事は急ピッチで進んでいたけれど、先週、ウスクダル駅の前を歩いてみて、『とてもじゃないが、5日後にここで開通式をやるのは無理だろう』と思った。『多分、陸上に出る次のアイルルックチェシメ駅で行うのではないか?』、そんな風に考えていた。
ところがどっこい、見事に間に合わせてしまった。やはり開通式は、ボスポラス海峡に臨むウスクダルでやらないと格好がつかなかっただろう。
開通式では、15日間無料になると発表されていたので、今日、私はヨーロッパ側のシルケジへ出掛けるのに、早速、この海峡横断地下鉄を利用してみた。
開通したのは、アジア側のアイルルックチェシメ駅からヨーロッパ側のカズルチェシメ駅までの5駅13キロの区間だけで、アイルルックチェシメ駅の少し先を見に行ったら、未だ線路も敷設されていなかった。こちらが開通するのは、1年6ヵ月後らしい。
それどころか、今日の時点では、未だシルケジ駅の工事も完了しておらず、乗った電車はシルケジを素通りして、イェニカプまで行ってしまった。イェニカプの地下駅から地上に出ると、その北側では地面が深く掘り返され、大規模な工事が進行中だった。タクシムとアクサライから、地下鉄2路線がここに接続されると言う。これが出来たら素晴らしく便利になるが、こちらも後6ヵ月は掛かるそうだ。
さて、イェニカプからシルケジへ戻るには、バスか路面電車に乗れば良いが、それでは、せっかく只でここまで来た意味がない。意地でも交通費は使うものかと、30分歩いてシルケジへ戻った。
でも、用事が済んで、またイェニカプまで歩いて行くのは、さすがに面倒だったので、帰りはシルケジから船に乗った。まあ、天気も晴れていたし、良い散歩になったと思う。
帰宅して、日本のネット記事にもざっと目を通してみたら、開通式でイスラムの祈りが捧げられた際に、安倍首相も手の平を上に向けて、イスラム式に祈っていたのが話題になっていた。
まず、トルコでこういう開通式に、宗務庁の長官が法衣を纏って現れ、アラビア語の祈祷を捧げること自体が、時代の変化を示していて興味深い。ほんの数年前でも考えられなかったはずだ。
祈祷があるのは、安倍さんに、前以て知らされていたのだろうか? なんとなく一瞬の判断で、周りの人たちに合わせたように見えた。トルコの報道でも注目されていたけれど、私が読んだ限りでは、概ね好意的に伝えられていたと思う。『私たちに配慮してくれた』という感じで、イスラムの威光を笠に着るような表現は見当たらなかった。
安倍さんの隣にいたルーマニアのポンタ首相は、手を下ろしたまま前で重ね合わせていて、これも敬意の表れとは伝えられていたものの、評価は安倍さんより低かったようだ。とはいえ、ポンタ首相はクリスチャンだろうから、それ以上のことは出来なかったに違いない。私たちは八百万の神だからねえ。トルコの人たちは、大概解っていないと思うけれど・・・。
しかし、今思い出したが、イスタンブール市内の合気道道場では、結構信心深いトルコの人たちも、神棚を前にして黙祷したりしていた。「あれ、神棚だけど良いの?」と訊いたら、「知ってます。伝統なんだから構いませんよ」と軽く受け流された。

f:id:makoton1960:20201129121839j:plain

f:id:makoton1960:20201129121902j:plain

f:id:makoton1960:20201129121925j:plain