メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ダボス会議の“ワン・ミニッツ”

現在のエルドアン政権には、肥満体の閣僚など一人もいない。これは確かだが、10年前の発足当時は、一人、もの凄く太った女性の閣僚がいた。“家族問題担当相”などを歴任されていたが、思わず「“体重問題”の担当じゃないのか?」と、つまらないことを言いたくなってしまうほど“立派”な体格だった。
党の創設メンバーであるため、最近も、党の集まりなどが報道されると、画面に姿を現しているけれど、全く痩せた様子はない。あれだけ太っていたら、健康にも影響が出そうだ。少しダイエットされたら宜しいのではないかと思う。
エルドアン首相は“恐妻家”で知られているくらいだから、男の閣僚には厳しくても、女性には優しいのだろう。
例えば、エルドアン首相のことを「トルコにもたらされたチャンス」とまで持ち上げている作家のアレヴ・アラトゥル女史も、首相の礼儀正しさを高く評価している。
しかし、アラトゥル女史は、1944年の生まれで、エルドアン首相よりちょうど一回り年上である為、首相も格別の敬意を表しているかもしれない。トルコの伝統として、年配の女性はとても丁重に扱われる。
余談だが、アラトゥル女史は、父親が東京のトルコ大使館に駐在武官として赴任していたことから、高校は東京のアメリカン・スクールを卒業しているそうだ。
このアラトゥル女史によれば、エルドアン首相は、2009年のダボス会議で、イスラエルのペレス首相とやり合った際にも、礼儀正しさを発揮していたらしい。
ガザ地区の問題を討論するパネルにおいて、ペレス首相は、延々と25分間、最後の辺りは、まるで吼えるように大きな声でパレスチナを非難し、間接的には、パレスチナを擁護したエルドアン首相へも非難の矛先を向けた。
これに対してエルドアン首相は、時間切れとしてパネルを終了させようとした進行役のデビッド・イグナシアス氏に「ワン・ミニッツ!」と呼び掛けて引き止め、「サユン・ペレス(敬愛なるペレス氏)」で始まる強烈な反論を試みる。
そして、なおもイグナシアス氏がパネルの終了を急ごうとするや、「・・・私には12分しか話させない。これでは駄目だ」と言い残して立ち上がり、会場を後にしてしまう。
あるテレビ番組で、アラトゥル女史は、あの場面を振り返りながら、「“ワン・ミニッツ”ばかりが話題になっているけれど、エルドアンは、まずベレスに“貴方は私より年上だ”と断っているでしょ? あれが大事なのよ。そうやって敬意を表していたじゃない」と語っていた。
私はこれを聞いて、『えっ? あれはそんなに敬意が表れた言い方だったかなあ?』と首を捻ってしまい、もう一度、“YouTube”で繰り返し観てみたが、あまり敬意が感じられる態度とは思えなかった。
エルドアン首相は、「サユン・ペレス(敬愛なるペレス氏)」と切り出してから、確かに「貴方は私より年上だ」と前置きしているものの、それに続くのは、「貴方の声は大きい。声が大きくなるのは罪悪感によるものだ・・・」という非難の言葉であり、前置きも敬意を表す為というより、『歳のわりには声が大きい』と言いたい為であるような気がした。態度も、ペレス氏を指差したりして、かなり厳しかった。
しかし、もちろんトルコ人の、しかも優れた知識人であるアラトゥル女史の言葉を否定するわけにはいかないだろう。いずれにせよ、エルドアン首相が女性に対して、優しくて礼儀正しいのは確かであるような気がする。
*以下の“YouTube”から、あのダボス会議を観ることができる(英語字幕付き)。 


tayyib erdogan davos - with subtitles from guardian