メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコ語の小説「Aldatmak(不倫)」

小説「不倫」に出てくるOLたち、トルコでは昇進して役職につく女性も多いから、日本で言うOLとはイメージが違うかもしれない。それから、食事風景などの描写は実にリアルだと思ったけれど、情事の場面がどれほどリアルだったのか、私には経験がないから良く解らない。
小説のその後の展開にリアリティーがあるとしたら、ちょっと恐ろしくなってしまう。少々記憶があやふやだが、以下のような展開になる。
アイダンたちが暮らすマンションは、高級団地のようなもので、敷地内に何棟か同じマンションが建っている。トルコには中級から高級に至るこういった団地が多い。敷地は壁で囲まれていて、入口には警備所がある。
アイダンは、この団地で町内会の委員みたいな役目を任されていて、団地内に庭園を整備するプロジェクトに奔走している。この為に、庭園等の設計を請負っているジェムと知り合うのである。
ジェムと淫らな関係に陥ったアイダンは、当初、ジェムの部屋を訪れて情事に耽っていたが、さらに刺激を求めて、夫と娘がいない時にジェムを部屋に誘い入れてしまう。そして、ついには夫が寝入った後に、ジェムを招き寄せ、バスルームで行為に及ぶという冒険を試みる。
ここに至って恐れをなしたジェムは、徐々に距離を置き始めるが、アイダンは既に危険な刺激がないと治まらなくなっていた。それで、次なる刺激として、団地内の方々の家を委員として訪れる度に、窃盗を重ねるようになる。最初はジェムの所の人形だった。
盗むのは、灰皿とか花瓶といった小物ばかりで、住民たちは奇妙な現象として話し合ったりするものの、犯人を探し出そうと警察に通報したりはしない。
ところが、元々アイダンと仲が良くない気難しい老夫婦の家でも小物を盗んでしまうと、これに気がついた老夫婦は躊躇わずに警察へ通報する。
翌朝、アイダンが銀行へ出勤しようと支度しているところへ警察が訪ねてきて、アイダンは事情聴取のため、署に連行される。
署には老夫婦の他、団地住人の殆どが事情聴取に呼ばれ、中にはジェムと夫のハールクの姿もある。しかし、老夫婦を除いて、ジェムも含めて誰一人、盗難の事実を申告しようとしない。老夫婦の思い違いじゃないかと言う人もいる。破滅を望んでいたアイダンは、この展開にがっかりする。
事件は、老夫婦の思い違いということで決着し、アイダンはハールクに伴われて帰宅したが、老夫婦の偽証を詰るハールクに向かって、「事実だからしょうがないでしょ」と言い、驚くハールクに、ジェムとの行為も含めて洗いざらいぶちまけてしまう。
ハールクは思いがけない話に悲しんで涙を流し、翌朝まで一睡もせずに苦悶し続けるが、結局、娘のためにもアイダンを許し、イスタンブールを離れてやり直そうと決意して、これをアイダンに告げる。アイダンは無感動にこれを首肯し、彼らはイズミルに向かって旅立つ。
今、手元に本がないから確認も出来ないが、だいたいこんな内容だった。これは現実に有り得る話なのか? まあ、世の中にはもっと奇怪な事件も起きているから、有り得ないと決め付けるわけにもいかないが・・・。
しかし、この小説は、本が余り売れないトルコで異例の大ベストセラーになった。特に女性たちの間で人気だったらしい。あの7人連れのOLたちも読んでいただろうか・・・。