メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ガラタ塔と“手回し回転椅子”

イスタンブールは、なにしろ歴史的遺産が所々無造作に転がっているような街だから、何の変哲もない横丁を歩いていて、ふと気がついたら、目の前にそういった歴史的遺産が姿を現し、なんだか幻惑されたように感じたりします。
先週も、ジハンギルの旧居を訪れた帰り、カラキョイへ出ようとして、坂道をとぼとぼ下っていると、両脇の庶民的なアパートの間から、ガラタ塔がやけに近くに見えたので、思わず立ち止まってしまいました。
この坂道は何度も歩いているし、そこにガラタ塔が見えるのは先刻承知でしたが、考え事しながらボンヤリ歩いていたのと光の加減で、急に視界に入って来たガラタ塔がいつもより間近に見えてしまったのかもしれません。
ごそごそカバンからデジカメを取り出して、いろんなアングルから写真を撮り、また坂道を少し下って最初の角で左に曲がると、今度はそこで子供たちが“手回し回転椅子”を楽しんでいました。
一回に3分間ぐらい回って1リラだそうです。椅子は六つあったけれど、全部に子供を乗せると重くなってしまうのか、二人だけしか乗せていませんでした。
業者のおじさんは、多分、回転椅子を自動車で運びながら、一日に何度も場所を変えて営業しているのでしょう。少し待って詳しい話を伺って置けば良かったと今更ながら残念です。
この回転椅子を見ていたら、なんだか紙芝居を思い出してしまいました。もう今の東京に紙芝居屋さんなんて来ていないと思いますが、私ら子供の頃はあれで随分楽しませてもらったのです。
紙芝居のおじさんは、もちろん商売でやっていたから、水飴とか梅ジャムといった売り物を買わずに只で紙芝居を観ている子がいれば、目敏く見つけて恐い顔で注意していたけれど、あのおじさんの語り口はなかなか見事で迫力満点でした。後年、「紙芝居を復活させよう」なんて活動している大学の先生の実演をテレビで観ながら、『この先生が紙芝居屋やっても水飴は売れないだろうな』と思ったくらいです。
イスタンブールに紙芝居屋さんはいませんが、子供たちは“手回し回転椅子”を楽しんでから、横丁を一つ曲がれば、そこにはガラタ塔の姿があるし、もう少し先へ行けば、アヤ・ソフィヤやトプカプ宮殿も見えたりして、もっと大きな紙芝居の中で遊んでいるようなものかもしれません。

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