ウクライナ情勢、日本でも「ロシアが攻勢を強めウクライナは苦境に立たされている」といった報道が見られるようになった。いったい、どうなっているのだろう?
そもそも、以前報じられていたようにウクライナが優勢だったのなら、まずは重要な拠点であるマリウポリからロシア軍を撤退させなければならなかったはずだが、マリウポリは敢え無く陥落してしまった。この辺りで欧米側の報道にもう少し疑問を持つべきだったかもしれない。
一方、米国では、この苦境を打開するため、ウクライナにモスクワを直撃できる長距離ミサイルを供与すべきという声が出て来ているらしい。
そんなことをやったら戦争は一気に拡大してしまうのではないかと思う。それよりも停戦の協議が再開されるように祈りたい。
しかし、トルコでも一時期盛り上がった停戦協議に関する報道は余り見られなくなったようである。というより、ウクライナ問題の報道自体少なっているような気がする。
それで私は、以下のチェ・ジュヨン氏の論説を思い出してしまった。これは5月9日の「ロシアの戦勝記念日」を前にして、チェ・ジュヨン氏がウクライナ情勢を語っている動画だが、その最後の方で、非常に興味深い見方が明らかにされている。
私の韓国語の聞き取りも大分怪しくなっているけれど、チェ・ジュヨン氏は凡そ次のように論じている。
今でこそ、侵攻の衝撃が大きいため、欧米側は結束を強めているように見えるが、そのうちこの状況に慣れてしまえば、結束に綻びも見えてくるだろうと言うのである。
ウクライナでも西部地域は日常を取り戻しつつあるから、東部への関心は薄れてきている。ブルガリア等、歴史的にロシアとの関係が深い国々からも「反ロシア」に対する異議の声が出て来るのではないか、等々・・・。
実際、報道が少なっているのは、この「慣れ」のためであるかもしれない。
スウェーデンとフィンランディアのNATO加盟問題も、スウェーデンの首相は「トルコ側との協議は長期化する」という見解を述べたそうだが、これに対する関心も徐々に薄れて行くのではないか?
トルコでは、エルドアン政権の一翼を担っているMHPのバフチェリ党首が「トルコの拒否にも拘わらず、NATOがスウェーデンとフィンランドの加盟を承認すれば、トルコはNATOから脱退する」と強硬な姿勢を見せたというものの、これに対する反響もそれほど伝えられていない。
それよりも、ギリシャに米軍基地が多数増設され、ギリシャとトルコの衝突が煽られている問題の方に多くの関心が集まっているようだ。
ギリシャの米軍基地は、トルコというよりロシアへ向けられているという説もあるが、いずれにせよ、トルコがこの挑発に乗ることは有り得ないと思う。
しかし、経済破綻以降、さほど順調な回復を見せているとも思えないギリシャに軍備を増強するような余裕があるのだろうか? この国はトルコの識者らが論じているように、完全に米国の傀儡と成り果ててしまったのかもしれない。
ウクライナもこのまま欧米の援助に頼り続ければ、傀儡にされてしまうだろう。というか、既に傀儡の状態であるような気もする。
ウクライナがその危険性を強く意識するようになれば、停戦協議も再開されるのではないか?
国益のためにも地域の安定と平和を望んでいるトルコは、もちろん停戦協議の再開を諦めていないと思う。