メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコとベネズエラ

2週間ほど前、サバー紙のコラムで、ヒラル・カプラン氏が、ベネズエラの軍事クーデター事件と故ウーゴ・チャベス前大統領の政治姿勢を詳細に伝えていた。
失敗に終わった2002年の軍事クーデターは、ウイキペディアの日本語版にも、「CIAの支援を受けて軍部によるクーデターが発生し、チャベスは軍に監禁され・・・」とほぼ断定的に記されているように、どうやらCIAの関与が明らかだったらしい。
そのため、チャベス前大統領は、アメリカと敵対する姿勢を一層強めなければならなかったのかもしれないけれど、2013年の3月にチャベス氏が亡くなった後も、ベネズエラの経済状況は悪化の一途を辿っているようだ。
これに比べて、トルコの外交姿勢は、遥かに現実的で穏健と言えるだろう。トルコは、アメリカと完全に敵対する冒険は、決して試みなかった。
エルドアン大統領も、7月15日の式典で、ギュレン教団を支援する外国勢力に言及しながら、国名等は明らかにせず、次のような表現に留めている。
「・・・我々がその名を一つ一つ挙げたら、我々は非常に重大な国際外交の危機に直面してしまう。だが、我々は全てを知っている。・・・」
おそらく、今後もアメリカ政府に、ギュレン師らの送還を要求しながら、アメリカとの関係は悪化しないように努めて行くのではないかと思う。仮に、CIAの関与がアメリカ国内で暴露されたとしても、『それはアメリカの内政問題・・・』と言って、静観の立場を取るかもしれない・・・。
一方、式典の演説で、エルドアン大統領は、「裏切者たちの首を撥ねる」などと激しい表現を使っているものの、これは以下の文脈で出て来た言葉であり、多分に比喩的な表現であるような気がする。
「背後に誰がいるのか解っているが、チェスで兵卒の駒をなぎ倒さなければ、城や象や馬を取ることはできない、王を詰めることもできない。そのため、まずは、この裏切者たちの首を撥ねるのだ!・・・」
一部の日本のメディアに、これがまるで「斬首刑」を望んでいるかのように伝えられていた。しかし、トルコはそういう前近代的な国家じゃない、もう一々反論を書くのも疲れてしまったけれど・・・。
確かに、トルコでは、これまでに何度もクーデターや軍事介入が繰り返されてきた。今でも、軍部の政治的な影響力が完全になくなったと断言するのは難しいという。
とはいえ、アタテュルク主義を奉じて、“反乱”の危機を乗り切った愛国的な軍の高官らも、トルコの民主主義の発展を望んでやまないはずである。
問題は、現政権と支持派の考えている“政教分離に基づく民主主義”と、一部の軍高官らの理想とする“政教分離”の差をどうやって埋めて行くのかに掛かっていたようだが、これも既に憂慮すべき状態からは脱していると信じたい。

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