メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ガジアンテプの自爆テロ

昨日(8月20日)、南東部のガジアンテプで、結婚式の宴を襲った自爆テロの犠牲者は50人を超えているらしい。
ISの疑いが濃厚と言われているけれど、犠牲者の方々は、信仰に篤い一般のイスラム教徒じゃなかっただろうか? いったい何を目的に、テロを仕掛けたのか全く理解できない。
識者らの見解によれば、警備が希薄なイベント会場などを狙って無差別に攻撃する“ソフトターゲット”と呼ばれるテロのようである。
最近、イスタンブールの市内では、至るところに警察官の姿が見られ、頻繁に検問を行っている。買い物して大きく膨らんだナップザックを背負っていると、一日に何度もナップザックを開けて中身を見せなければならなくなってしまう。
でも、あれは一種の安心剤になっていると思う。炎天下の業務に疲れたのか、仮設の検問所で一休みしている警察官を見たら、近寄ってナップザックを開け、『ちゃんと中を確認してくれよ!』と言いたくなったくらいである。
しかし、クーデター事件以来、警察機構の中からも、ギュレン教団関係者がもの凄い勢いで排除されているため、警察官の総数も相当少なくなっているはずだ。かなり厳しい勤務形態になっているかもしれない。一休みしているだけで文句を言ったら申し訳ないだろう。
それどころか、なにより通常でもリスクを伴う警察官の仕事が、今やいつ殉職しても不思議ではないほどの危険にさらされている。また、クーデターに対する命懸けの抵抗運動の中でも、警察官の活躍は際立っていた。
だから警察官が一休みしているのを見たら、冷たい水でも差し入れたくなるくらいの気持ちがなければいけない。文句ばかり言って感謝を忘れたら人間お終いだ。
ところで、これだけ警察官の姿が目立っているのは、イスタンブールアンカラのような大都市へ、他の地方から警察官が動員されて来ている可能性もある。南東部では比較的に安全と思われていたガジアンテプは、それで手薄になった間隙を狙われたのだろうか?
数日前、やはり南東部のエラズーでテロがあり、こちらはPKKの犯行とされているけれど、同様に「何故、エラズーなのか?」と言われていた。クルド人は多いが、ディヤルバクルのようなPKKの勢力圏ではなく、この点もガジアンテプと共通している。
PKKは、クーデター事件があってから暫くの間、鳴りを潜めていたという。それがまた動きを活発化させたため、ギュレン教団との関連を取り沙汰する向きもある。
しかし、昨日、NTVのニュース番組に出演したメフメット・シャーヒンという国際関係専門家は、このギュレン教団との関連説を否定して、次のような推論を述べていた。
トルコの南東部で、クルド人民衆の支持を失ったPKKは、既に活動拠点をシリアの北部に移し、もともと密接な関係にあったPYD(シリア・クルド民主統一党)と一体化している。
シリア北部では、メムビチという要衝地を巡って、ISとPYD等が激しく争い、一週間ほど前、PYDの武装組織と言われるYPGを中心とした勢力が、メムビチからISを駆逐した。
つまり、PKKとPYDは、クーデター事件でトルコ軍が身動きを取れなくなった間に、着々とシリアで勢力範囲を広げていたのである。
そして、現在、トルコ国内で再びテロを活発化させているのは、クーデターを制圧して安定を取り戻したトルコが、またシリア問題に介入して来ないように封じ込めるためだという。
このメフメット・シャーヒン氏の推論が、どのくらい的確なのか、私には解らない。いずれにせよ、トルコが、IS、PKK、ギュレン教団という3つの大きなテロ組織から治安を守らなければならない状況に置かれているのは確からしい。

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