メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ソフトターゲットのテロ

ガジアンテプは、1993年の夏に一度だけ訪れたことがある。当時は、東隣のウルファとそれほど変わらない“クルドとアラブの街”という印象だった。23年経った今では、産業化が進んで見違えるような大都市になったそうである。
クルド人の人口が多いにも拘わらず、2015年11月の国政選挙で、クルド系政党HDPの得票率は、10.5%に留まり、得票率が最も高かったのは、政権与党AKPの61.6%だった。
ウルファとエラズーの数値もこれと大きく変わっているわけじゃないが、“トルコのクルディスタンの首都”などと呼ばれたりしているディヤルバクルでは、HDPが72.8%で、21.4%のAKPを大きく引き離していた。
しかし、最近、ガジアンテプでは、シリア難民の急増により、ISも入り込んで来ていると言われ、当局は警戒を怠っていなかったらしい。
そのため、警備が手薄になっていたとは考えられないそうだけれど、事件が起きたのは、中心街から外れた普通の住宅地であり、おそらくそれほど厳重な警備の対象とはされていなかったのだろう。
自爆犯は未だ14~5歳の子供で、犠牲者もその大半が女性や子供だったと伝えられている。(結婚式ではなく、“クナの夜”という新婦の女性の縁者が集まる前夜祭だったという。)
この“クナの夜”の集まりに入り込もうとした14~5歳の子供を事前に取り押さえるのは、如何なる警備態勢をしいたとしても難しかったに違いない。
イスタンブールでも、厳重な警備態勢がしかれているのは、タクシムなどの繁華街やスルタンアフメットのような観光地と、それに通じる地下鉄の駅といったポイントで、私が住んでいるイエニドアンの街には何の警備態勢もしかれていない。
とはいえ、イスタンブールの場合、地方からの接点になるバスターミナルや鉄道の駅で厳重な警戒を行っているから、シリア国境に近い南東部と比べて遥かに安全ではないかと思う。
ISが、ガジアンテプでクルドの人たちを標的にしたのは、シリア北部の拠点地メムビチをクルド勢力に奪われた報復という説も報じられていたが、女性や子供たちへの攻撃は、まさに鬼畜の所業と言うよりない。
PKKは、トルコの南東部で勢力の大半を失い、追い詰められてきた所為か、このところ、多くのクルド人住民を巻き込むテロも仕掛けているけれど、以前は、警察や軍に的を絞っていたはずである。(トルコでクルド人民衆の支持を失い、拠点をシリアへ移したため、既に“住民を巻き込まない”という配慮もなくなっているらしい。)
「ISとPKKは、対立しながらも、共通の敵(つまりトルコ)に対しては、協力し合っているのではないか」と論じて、「今後はソフトターゲット的なテロが増えるかもしれない」と警告を発する識者もいる。
こういうテロは、トルコに限らず、何処ででも発生する可能性があるだろう。恐ろしい時代になったものである。

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