メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

バイカル氏の失脚を図ったのは誰だったのか

 「祖国を望む」というテレビ番組で、退役海軍中将のアッティラ・クヤット氏が語っていた。NATO駐在武官としてヨーロッパに赴任していたクヤット氏へ、トルコ軍のクーデターを問い質そうとしたNATO高官は皆無だったそうだ。
何故なら、トルコが軍の統制下にある限り、欧米はトルコに対する要求を参謀本部へ伝えるだけで済み、議会の承認など得る必要がなかったからだとクヤット氏は説明している。
欧米が望んでいたのは、トルコの民主化などではなく、“欧米の言うことを良く聞くトルコ”だったというのである。
しかし、2007年以降、トルコ軍が政治介入を封印したので、欧米は軍を通して、トルコをコントロールすることが出来なくなった。その為、今度はフェトフッラー・ギュレン教団を使って、影響力を及ぼそうとした・・・という仮説を主張する人もいる。もちろん、何の確証もない“仮説”だが、それは次のように続く。
2009年になり、AKP政権が米国と微妙な距離を取り始めると、ギュレン教団はCHPに接近したものの、党首のバイカル氏がこれを認めなかったため、セックス・スキャンダルでバイカル氏を失脚させた。
果たしてどうなんだろう? 考えて見たところで、“バイカル氏の失脚を図ったのは誰だったのか”といったような謎解きは、結局、答えが得られないまま、様々な“仮説”と共に忘れ去られてしまうかもしれない。
でも、バイカル氏には、「トルコを、一から十まで外国の言いなりにされて堪るか!」という信念が明らかであるような気もする。この点に限り、バイカル氏とエルドアン首相は結構一致しているのではないだろうか。
さて、“YouTube”で観たので、いつの放送か良く解らないが、3~4年前のものじゃないかと思う。ニュース番組でキャスターが、バイカル氏の話を聞いていた。バイカル氏は、夫人と一緒にエルドアン首相夫妻と会って懇談した時の様子を語っている。
その時、エルドアン首相のエミネ夫人は、バイカル氏の夫人に、「うちの主人がやったことの中で何か気に入ったものはありませんか? バイカル氏はここにいないと仮定して仰って下さい」などと訊いたらしい。
これにバイカル氏が割って入り、「エミネさん、貴方は大きな過ちを犯したね。それを妻じゃなくて私に訊いてくれたら、私は貴方たちがもっと喜ぶような返答をしてあげたよ。しかし、もう仕方がない。彼女はなんと答えるかな?」と揚げ足を取ったそうである。
キャスターは、「それで奥さんは何とお答えになったんですか?」とバイカル氏に訊く。バイカル氏は、「禁煙法だよ」と答えて愉快そうに笑った。そして、「エルドアン首相と会って話すこともある。でも政治の話はしないよ」と明らかにしていた。
これを観たら、『なんだ、国会では、いつでも一触即発みたいに罵り合っていたのに、家族で会ったら、そんな暢気な話をしているのか?』と拍子抜けしたけれど、その和やかさにホッとしたものだ。
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