メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

疑獄事件

先日、田中角栄氏とエルドアン首相は、何だか良く似ているなんて書いたけれど、AKPを巡る疑獄事件の発生で、ますます似て来てしまった。

しかし、角さんの辞任後に勃発したロッキード事件と違って、エルドアン首相は未だ在任中であり、捜査の対象になったのも、首相自身ではなく、閣僚の子弟や区長といったところである。それにしても、“独裁者”と言われるエルドアン首相は、司法や公安を完全に支配していたわけじゃないらしい。

もう一つ、ハルク銀行というトルコの銀行が標的にされている。トルコは、経済封鎖により、イランへの送金が出来なくなった後も、イランから石油を購入し続けていて、その代金は、イランが持つハルク銀行の口座に振り込まれていたと言う。これをアメリカは問題視していたそうだ。

その為、この疑獄事件の背景には、アメリカがいるのではないかという説もある。ロッキード事件にも、角さんが石油を独自ルートで購入しようと画策した為に仕掛けられたという“陰謀説”があるから、この点でも二つの疑獄事件は良く似ているかもしれない。

ただ、日本では、ロッキード事件アメリカが関与していても、特に国民感情が刺激されることはなかったようだけれど、トルコの場合、事件の背景にアメリカのイメージが見えるだけでも、反米感情に火がつく可能性がある。もっとも、多くの国民が、アメリカとの経済関係の維持を願っているから、イランのような“反米”とは明らかに違うだろう。

また、この事件では、それと共に、フェトフッラー教団の動向にも注目が集まっている。立件しようとした司法と公安の関係者は、教団のメンバーではないかと言われていて、いよいよ教団と政権の全面対決が取り沙汰されているのである。

しかし、ここで不思議なのは、仮にこの説が事実だとして、何故、教団はこんな思い切った手に出たのだろうか?

もしも、教団の思惑通りに行って、政権が交代したとする。教団が狙っているのは、AKP内で教団に近い、エルドアン氏以外の人物が首相になることだという説もあるけれど、先日、元サッカー選手で、教団のメンバーでありながらAKPの議員でもあったハーカン・シュクル氏が辞任しており、今や教団対AKPという様相を呈しているから、これはちょっと考え難い。目的は、AKPの下野だろう。

この場合、AKPの代わりに政権に就くのは、おそらく第一野党のCHPである。しかし、今現在、教団とCHPの間に表立った協力関係があるようには見えない。この状態で政権についたCHPが、教団と手を結ぶ可能性は殆どないように思える。

何と言っても、CHPは“政教分離”を旗印に掲げる政党だから、下手をすると教団の排除に動き出すかもしれない。

さて、AKPが、今後も選挙で勝ち続けて、政権を維持した場合には、どうなるか? もちろん、教団は排除されるに違いない。市民運動としての存続さえ危ぶまれる。教団にとっては、どちらに転んでも、良い結果に至らないだろう。

これには色んな風説がある。曰く、『教団は、以前よりアメリカの意向に従っていた。尊師もアメリカで人質に取られているから、その命令には逆らえない・・・』『AKPに追い詰められた教団が、破れかぶれで最後の反撃に出た・・・』

いずれも風説に過ぎないけれど、一理はあるように思えるくらい、教団の動きは不可解で、残念だとしか言いようがない。

いったい、どうなるのか? 「アメリカに、トルコと全面的に対決する意向はない。嫌がらせして何らかの譲歩を引き出そうとするぐらいだろう」と言う人もいる。だから、「時が来れば、エルドアン首相とオバマ大統領は平気で握手する。その時、教団なんて話題にもならない」そうだ・・・。

色んなことが少しずつ明らかになるのは、まだまだ先の話であるような気がする。