メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコは「クルド人の難民を受け入れる国」である

日本では、クルドトルコ人の「難民」が問題になっているけれど、世界で最も多くの難民を受け入れている国が何処なのかと言えば、それはトルコに他ならない。

2011年に隣国のシリアで内戦が勃発してから、トルコは既に300万人以上のシリア難民を受け入れて来た。このシリア難民の中にはクルド系シリア人も含まれている。

トルコは、サダム・フセインの時代以来、北イラクが戦火に見舞われると、その度に難民を受け入れているが、この難民の多くはクルド人だった。

一方、トルコに住むクルド人が難民となって出て行かなければならない状況は何処にもない。トルコは「クルド人の難民を出す国」ではなくて「クルド人の難民を受け入れる国」なのである。

トルコの分割を企図してきた西欧は、その目的のためにトルコの「政治的なクルド人難民」を受け入れていたが、シリア難民に関しては、トルコに押し付けたまま殆ど受け入れようとしていない。これほど理不尽なことがあって良いものだろうか?

トルコ政府は、シリアの内戦が激化して、難民が国境に押し寄せると、非常処置で国境を開放し、審査もせずに大量の難民を受け入れてしまったこともある。

これは今でも批判され、野党による政権攻撃の材料になっている。300万人以上と桁が違うため、さすがにトルコでも「シリア難民」は少なからず社会問題になっているようだ。

しかし、こうしてトルコが周辺国の難民を受け入れて来た背景には、かつての大帝国の矜持といったものがあるような気もする。シリアもイラクオスマン帝国の領域であり、その人民は皆同胞だったからである。

もっとも、トルコが受け入れて来た移民・難民は、「オスマン帝国の同胞」に限られていない。トルコには相当数のアフリカ人が入って来ているけれど、彼らの中には母国での戦火を逃れてきた人たちもいるかもしれない。

20年以上前に、トルコの雑誌か何かで読んだ話だが、アフリカの人たちはトルコへの入国を果たすと、直ぐにパスポートを破棄してしまうという。

パスポートが無ければ、彼らの国籍が何処にあるのか特定するのは難しいため、強制送還することができなくなり、そのまま居住が認められてしまったそうだ。

トルコは国籍の取得も非常に容易である。二重国籍も認められている。

以下の「韓国やトルコの人たちにとって国籍とは?」という駄文にも記したように、4年前、トルコ在住の韓国人の友人が国籍を取得したのには私も驚かされた。

やはり、トルコは大帝国の気概を失っていないのだろう。だからこそ、これほどまでに懐が深いのだと思う。