日本では、最近、人里の近くまで下りて来たクマに、住民が襲われる事件が相次いでいるという。このクマは、本州以南に生息しているツキノワグマで、北海道のヒグマに比べれば、ずっと小型で、肉食の傾向も少ないと言われていた。
ところが、以前実家のあった相模原市藤野の周辺では、鹿が増えたため、これを襲って食べるようになり、冬眠しなくなったクマもいたらしい。ドングリのような食べ物と異なり、鹿は冬になってもいなくならないからだ。
それで、「鹿の味を覚えたクマは、人間が意外と弱っちくてのろまなことが解れば、こっちを襲うようになるのでは・・・」などと半ば冗談で話していたら、こんなことになってしまうとは・・・。
“人食いトラ”とかいうのも、年老いて鹿などの獲物を追えなくなったトラが、一か八か人間に手を出したところ、いとも簡単に仕留められたので、以後、常食するようになったのが多いそうである。ツキノワグマが、同様の過程を経ないように祈りたい。
そういえば、私が初めてイスタンブールに来た91年の頃は、街角でクマに芸をさせて見物料をもらう、“猿回し”ならぬ“熊回し”が未だいた。
それが、翌92年だったか、動物愛護団体の人たちが「クマを虐待している」として廃止を求める運動を始め、政府もこれを認めて、瞬く間に“熊回し”は街角から姿を消してしまった。
“熊回し”のおじさんたちは、何か他の職を探し、クマは故郷の山野に返されたらしい。山野で無事に暮らせただろうか?
クマは、シリアヒグマというヒグマの亜種で、北海道のヒグマとは比べ物にならないくらい小さかった。ツキノワグマより小さかったかもしれない。なんでも、ヒグマの仲間では、最も肉食性が少なく、草食動物のように臼歯が発達していたという。その所為か、なかなか愛嬌があって可愛らしかった。
しかし、トルコ語でアユ(クマ)と言った場合、決して“クマさん”と呼ばれるような愛嬌は感じられない。下劣で粗暴な奴の代名詞である。
トルコ語の罵倒する言葉に良く使われる動物は、クマ、ロバ、犬といったところじゃないかと思うけれど、犬は何処でも可愛がられていて、街角には野良犬がのんびり昼寝していたりする。
でも、最も可愛がられている動物は、やっぱり猫だろう。トルコの野良猫は、人を見たら逃げるどころか、餌をもらえるんじゃないかと思って近寄って来る。
写真の広場の正式な名称は何というのか知らないが、私は勝手に「猫広場」と名付けている。シシリーの軍事博物館の直ぐ近くで、暫く来なかったら、猫が随分増えていたので驚いた。