メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

日本の政界の“心理的な言い訳”?

アメリカでは、世界タイトルを取るぐらいのボクサーなら、自分が主体となって、コーチやらトレーナーを雇い入れて試合に臨む。試合の後で、敗戦の理由をトレーナーの調整ミスだとして、トレーナーを訴えたりもする。 
ベニテスという名選手が、ハーンズとタイトルを争って敗れた後、日本人のトレーナーをそうやって訴えたことがあった。この日本人トレーナーは、コンディション作りのプロとして、アメリカのスポーツ界では結構知られた人物だそうだが、ベニテスは彼の調整が巧く行かなかった為に負けてしまったと主張したのである。 
この時、ボクシング雑誌に載っていた日本人トレーナー氏のコメントがとても興味深かった。かなりうろ覚えだけれど、そのコメントは以下のようなものだった。「調整は巧く行ってベニテスは絶好調でしたよ。試合を見た人は皆そう思っているはずです。ベニテスはあまりにも絶好調だったのに負けてしまい、よほどショックだったんでしょう。それで私を訴えたりしているんですね」。 
確かに、あの試合のベニテスは絶好調だったと思う。ハーンズにKOされなかっただけでも凄い。3ラウンドぐらいまでは、ハーンズのジャブもすいすい外して芸術的な動きだった。 
名著「カシアス・クレイ」で知られるホセ・トーレスは、ある選手が練習の後にタバコを吸い始めたら、それは敗戦の心理的な“言い訳”を求めているからだと言う。つまり、試合に負けたのは能力が劣っていた為ではなく、タバコを吸っていたからだと思いたいのだそうだ。 
ベニテスは絶好調だった為に、敗戦の心理的な言い訳が見つからず、自尊心を大きく傷つけられてしまったのかもしれない。 
私のように人生そのものが言い訳で成り立っている自虐男には計り知れない天才の悩み。本当に興味深い話だと思った。 
しかし、今の日本の政界を見ていると、そういう心理的な言い訳ばかりを求め合っているような気がして嫌になってしまった。「まあ、あの人は二世だから・・・。別に俺たちより能力があるわけじゃないけれど・・・」と言いながら担いでいるんじゃないだろうか? 
自分たちより能力もあれば体力もある、しかも格好良いなんて奴に上に立たれたら堪らない・・・。それなら二世の方に・・・。そんなんだとしたら全く嫌になってしまう。横並び横並び、皆で足の引っ張り合い・・・。まあ、太平の時代ならそれで良いのかもしれないけれど・・・。