メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

小さな連鎖

どういう本で読んだのか忘れてしまったけれど、山本七平が戦後世代の「戦前の人たちは、何故、戦争を防げなかったのか?」という問いに答えていた。
「君の机に片付けなければならない仕事がたくさんあって、それを片付けないと周りの人たちが迷惑するとしたら、君はその仕事を一生懸命にやるだろう? 戦前も皆そうやって働いていたら、戦争になってしまったんだよ」。うろ覚えだが、だいたいこんな内容じゃなかったかと思う。
戦前世代のいろいろな弁明を聞いたり読んだりした中で、私はこの話にとても説得力を感じた。つまり、小さな連鎖の中で、皆が自分の役割を果たしているうちに戦争が始まってしまったということだろうか。
「より快適な生活を営む為の代償を、他の人々が貧困と挙句の果てには命によって支払っている連鎖」を考えて、他の人々に迷惑を掛けないようにすれば、なるほど戦争は防げるかもしれないが、誰もそんな途方も無いことは考えられないような気がする。
今でも、トルコの農村に行けば、家族が総出で“犠牲祭”を営んでいるんだろうけれど、それはイスラムの教義という大きな連鎖じゃなくて、周囲の小さな連鎖の中で役割を果たしているだけじゃないかと思う。
だから、都会に出てきて、別の小さな連鎖の中で暮らすようになれば、犠牲祭には進んで立ち会わなくなってしまう。多くの人がイスラムの教義なんて余り深く考えていなかったのだろう。 

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