メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

力士の健康

大相撲の28歳の三段目力士が新型コロナ肺炎で亡くなった。これに対して「壮健な若者の命も奪うコロナ」と語った政治家がいたけれど、糖尿病を患っていたという28歳の力士が果たして「壮健な若者」だったと言えるのかは疑問である。

亡くなった力士に限らず糖尿病を患う力士は多いそうだ。無理にでも体重を増やそうとする育成方法に問題はないだろうか? 何だか余り健康的なスポーツとは言えないような気もする。多量の飲酒が奨励されているのも他のスポーツ界では有り得ないと思う。そのためか、力士には長生きする人が少ない。

亡くなった力士も小柄な体格だったため、かなり無理して体重を増やそうとしていたのではないか。それでも、入門12年で幕下へ上がることさえ叶わず、夢を閉ざされてしまった。無念としか言いようがないだろう。

私の中学校時代、相撲部屋から通って来る同級生がいた。3年生の時に入門して転校して来たが、とにかく凄い体格で力も強かった。皆が将来に期待していたけれど、結局、関取にはなれなかった。上には上がいたということかもしれない。亡くなった力士も想像以上の厚い壁に苦しんでいただろう。

横綱武蔵丸武蔵川親方が、まだ引退間もない頃、同じく米国出身の曙や小錦と日本語で対談している場面をYouTubeで観た。対談の中で武蔵川親方は、毎年入門して来る新弟子に、将来的にとても無理と思える若者が少なくないことを嘆き、日本でも他のプロスポーツは、高校などのクラブで頭角を現した者だけを選抜して入れるのだから、相撲界もそのようにすべきだと語っていた。

ところが、数年後、新たに部屋を立ち上げた武蔵川親方は、日本の高校等にコネがないため、仕方なく未経験の若者も入門させなければならない苦悩をテレビ番組で吐露していたのである。弟子の頭数が揃っていないと部屋を維持できないからとはいえ、なんと言う矛盾なのかと番組を見ながら私は唸ってしまった。

YouTubeで観た対談で、武蔵川親方は「今の日本に中卒で働く人ってどのくらいいるの?」とも話していた。将来的に無理そうな若者を中卒で入門させて、その後の人生にどういう影響を与えるのか考えていたのだろう。それが部屋を立ち上げたら同じことをしなければならなくなってしまった・・・。

フィギュアスケートのようにピークを早く迎えるスポーツで、まだ10代前半の少年少女へ過酷な練習を課して良いものかという声も聞かれたが、彼らはそういった試練を後の人生に活かして行けるかもしれない。しかし、将来性も確実でないまま中卒で相撲部屋に入門したうえ、健康まで失ってしまったら、その後の人生をどうしろと言うのだろう?

相撲協会には大きな改革が必要であると思う。