メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

一度上げた給与を下げたら暴動が起きる?

トルコリラ(TL)は、2013年頃から価値を下げ続けていたけれど、今月に入ってから暴落と言って良いほどの下げ幅を見せた。

2ヵ月前に、1ドル=8~9TLで推移していたのが、17~18TLまで下がってしまったのである。

これに対して、トルコ政府は、まず最低賃金を大幅に引き上げたが、そのため、「政府は、もう8~9TLのレベルまで回復することはないと見ているのではないか?」という声も聞かれた。

一度引き上げた最低賃金は、回復したからと言って下げるわけには行かないからだ。

1999年~2003年にかけて、私が在トルコの邦人企業に現地採用で奉職していた頃は、まだデノミを実施する前で、TLの桁数は今より6桁も多く、私の月給も数億TLのレベルだった。

さらに、2001年までTLは順調(?)に下落し続けてため、年に2回、大幅な昇給があり、その度に数千万TLも加算されたのである。

しかし、2002年になってからだと思うが、TLの下落に鈍化が見られ、先行きの予想が難しくなると、会社は毎月小刻みに上げる昇給システムに切り替えた。

年2回の昇給システムで大幅に上げてから、TLの下落が止まったとしても、月給を再び引き下げるわけには行かない。そんなことしたら、ストライキが起きてしまう。

実際、毎月昇給のシステムが発表されたその日は、大幅アップを待っていた従業員らが納得せずに職場放棄したため大騒ぎになってしまった。なんとか説得するのに丸1日掛かったような記憶がある。

そのぐらいだから、一度引き上げた最低賃金をまた下げたりすれば、それこそ暴動が起きてしまうかもしれないのである。

今回、トルコ政府は最低賃金引上げの処置に続いて、各銀行に「下落した場合の損失を補填するTL定期預金口座」を開設させて、これにTLで預金するよう国民に呼びかけたところ、多くの国民がドルを売ってこれに応えたので、TLは僅か1日で12~13TLのレベルまで持ち直した。

(この辺り、経済の良く解っていない私はどのくらい理解できているのか怪しいけれど、だいたいこんな話ではないかと思う)

政府としては、国民がこれに全く応じなければ、それでTLが下落を続けても損失を補填する必要はなく、国民が応じてくれたら、少なくともそれ以上の下落は防げるので、それほどリスクのある施策ではなかったらしい。

結果は今のところ上々であるそうだ。最低賃金引上げの件もあり、政府は8~9TLまで戻ることを望んでいないというのである。

また、12~13TLぐらいの方が、輸出を伸ばし雇用を拡大するためには都合が良いと指摘する識者もいる。さて、これから先はどうなるだろうか?

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