《2009年12月10日付け記事を修正して再録》
イスタンブールの大きなスーパーに行けば、ラクやワインに限らず、色々なウイスキーやブランデーの銘柄、ラム酒、テキーラ等々、大概の酒は手に入ると思う。
入手が難しいのは、残念ながら清酒や紹興酒といった東洋の酒だろう。私は紹興酒も大好きだから、とても悲しかった。
中国の酒は、1981~2年、飯田橋は五軒町辺りの安アパートで暮らしていた頃、江戸川橋駅近くにあった「中華風居酒屋」で色々試しながら飲んで、その味を覚えた。
当時は、新宿区内の運送屋で働いていて、アパートから車庫まで自転車通勤、仕事帰りに自転車で、その「中華風居酒屋」に寄っては一杯やっていたのである。
さて、ある晩、また中国酒をしたたか飲んで帰り、翌朝、アパートで目を覚ましたら、これが遅刻寸前の時間で慌てて飛び起きて外に出ると、先ずは自転車を探したけれど、そこで目にした物は、前輪が外れ胴体部も無残にひん曲がった自転車の残骸だった。
一瞬の何のことだか解らず、漫画の吹き出しに「?」マークが四つぐらい並んだような状態でポカンと2秒ぐらい固まっていた。
とにかく、自転車は使えないと解り、他のことは何も考えないまま表通りまで走り、タクシーを止めて乗り込んで行き先を告げたところ、「お客さん、何があったんですか?」と運転手さんに訊かれた。それから、運転手さんは「顔中、傷だらけですよ」と言って、バックミラーをこちらの方へ向けてくれた。
そのバックミラーを覗き込んだら、なるほど顔中に擦り傷があり、気がついたら肘や膝も何処かにぶつけたようで少々痛む。『えっ? 何があったんだ?』と、前の晩のことを思い出そうとしたけれど、はっきり覚えていたのは、「中華風居酒屋」で飲んでいるところまでで、後は薄っすらと自転車を担いで歩いていたような記憶がチラついているだけだった。
しかし、あの年齢だと回復も早く、朝、2t車を積み込んで一汗かいたら、それでもうケロッとして一日快調に働き、帰りにまた何食わぬ顔で「中華風居酒屋」で一杯やりながら、30歳ぐらいの店主に、「昨日は、飲んでいて様子が変じゃありませんでしたか?」と訊いてみたところ、「うーん、ちょっといつもより多かったみたいだね。それで、『もう一杯』て言うから、『もうよしなよ』って言ったら、素直に応じて帰ったよ」と教えてくれたものの、さすがに、その後、自転車に乗った様子までは見ていなかったそうだ。
結局、いくら考えても何一つ思い出せなかったけれど、おそらく、何かの拍子で自転車の前輪が外れたために転倒してしまったのだろう。まあ、大事に至らず、つまらない思い出話が増えただけで良かったかもしれない。