メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

朝鮮半島の「冷戦」は終結するだろうか?

「トランプの新たな中東ビジョン」というコラム記事で、ベルジャン・トゥタル氏は、米国による「中東とイスラム世界に対する占領とカオスの戦略」は1991年に始まったと記している。

1991年、ソビエトの崩壊により「冷戦」が終結した。

冷戦とは言うものの、世界各地で米ソによる代理戦争が相次ぎ、おそらく米ソでも準戦時体制と言えるような状態が続いていたのではないだろうか?

双方で膨大な軍事費が計上され、CIAにKGBという諜報機関も肥大化した。その経済的な負担は、ソビエト崩壊の一因になっていたようである。

冷戦の終結で、平和が訪れることにより、一方の米国は軍事費や諜報機関の予算を大幅に削減できたのではないかと思う。

ところが、米国は「占領とカオスの戦略」によって準戦時的な体制を継続させた。2003年のイラク侵攻では、巨額の軍事費が使われたはずである。

グルジアウクライナで起きたカラー革命にも米国から相当な資金が流れ込んでいたという。

CIAなどが仕掛けたとされる工作には、いったいどのくらい費やされていたのだろう。

果たして、米国はそれに見合う利益を得ることができたのか? おそらく、多くの敵を作ってしまっただけのような気がする。

こうした負担ばかりが大きい戦略を無理にでも継続させれば、米国もソビエトと同じように崩壊してしまいそうだ。トランプ大統領とその支持勢力は、この無駄な戦略から撤退し、「冷戦」を完全に終結させるつもりなのかもしれない。

もしも、そうであるとしたら、中東とウクライナに平和をもたらした後、未だに南北の「冷戦」が続いている朝鮮半島の問題も解決しなければならないだろう。

トランプ大統領は、1期目の2019年に韓国の文在寅大統領と共に板門店を訪れ、北朝鮮金正恩総書記と劇的な面談を実現させている。

停戦中とはいえ、交戦国の首脳同士が軍事境界線を跨いで行き来したのだから、大変な出来事だったはずだが、その後、何だか忘れ去られているかのようである。

米国では、トランプ大統領が2期目の選挙に敗れて、バイデン大統領の時代となり、翌2022年には、韓国でも文在寅大統領の後継者が当選を果たせず、バイデン大統領に近いと思われる尹錫悦氏が大統領に就任、南北はまた激しい対立関係に戻ってしまった。

しかし、南北の平和を求める勢力を抑えきれなくなった尹錫悦大統領は戒厳令を発動して、自らの立場を危うくして行く。

2024年12月6日付けアイドゥンルック紙のコラム記事で、アドゥナン・アクフラット氏は、尹錫悦大統領による戒厳令をバイデン政権の扇動によるものだと決めつけて以下のように説明していた。

「バイデン政権の扇動により、韓国の大統領は12月3日に戒厳令を発動して国会を閉鎖した。尹大統領は国会で過半数を有する野党を親北朝鮮として見せながら、クーデターを正当化しようとしたものの、国会が開かれて戒厳令の決定は覆された。」

結局、尹錫悦大統領は弾劾され、今日(6月4日)、文在寅大統領の後継者である李在明氏が大統領に就任している。

その李在明大統領は就任演説で「日韓米の同盟」を強調したらしい。

これでは文在寅氏というより尹錫悦氏の後継者であるかのようだが、「同盟国」の米国では、既にトランプ氏が返り咲いているのである。

私は、それほど遠くない時期に「トランプ・李在明・金正恩」の3者会談が実現する可能性もあるのではないかと思って何だか興奮している。直ぐに「統一」とは言わずとも、南北の交流は復活して拡大して行くかもしれない。

さて、これに対して、もう一方の「同盟国」である日本はどうするのだろう? 

ベルジャン・トゥタル氏は、2022年1月2日付けサバー紙のコラムに以下のように書いている。

「米国の太平洋における忠実な同盟者である日本は、新たな飛躍と言える『戦略的自主独立』政策の一環で、ロシア・中国・北朝鮮、そしてイランとの関係を強化して、米国の軍事的・政治的な圧力を少し鈍らせることを狙っている。」

3年前にこれを読んだ時は、『なんと荒唐無稽な・・・』と思ってしまったけれど、今考えて見ると、そうでもないような気がしてくる。

まず、この記事が書かれた6ヶ月後に、安倍元首相が暗殺された。

安倍元首相は在任中に1期目のトランプ大統領と会談を重ねている。その際、トランプ大統領在日米軍の撤収を仄めかし、安倍首相は再考を求めたそうだけれど、当時から日本は米国の出方を窺いながら「自主独立」の道を模索し始めていたのかもしれない。

先月(2025年5月29日)、安倍氏の未亡人である昭恵氏が電撃的にモスクワを訪問してプーチン大統領と面会した。

昭恵氏によると、生前、ロシアのウクライナ侵攻を半ば擁護するかのような発言を残していた安倍氏は、もう一度プーチン大統領と話し合うことも考えていたそうである。

米国で「冷戦体制」の継続を望んでいた勢力が、これを許し難いと感じた可能性は充分に考えられるだろう。

日本政府は、今のところ、昭恵氏の訪ロを関知していなかったと弁明に努めているけれど、親ロシア派と見做されている鈴木宗男氏が自民に復党したりして、ロシアとの関係改善が水面下で進められているような気もする。

仮に、トランプ政権の米国が朝鮮半島の「冷戦」を終結させて、「日本の戦後」が終わることも容認するのであれば、東洋にも真の平和が訪れるのではないかと思う。