メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

日本もトルコも大国の狭間で難しい?

トルコは冷戦の期間を通して西側の一員に数えられていた。NATOにも加盟している。親米国と言っても良かっただろう。

しかし、あまり忠実な親米国ではなかったようだ。1960年のクーデターで処刑されてしまったメンデレス首相は、ソビエトへの接近を試みようとしていたらしい。

その後も、左派には反米思想が根強かったし、右派イスラム勢力にもエルバカン元首相のように強く反米を主張する人物が少なくなかった。

冷戦が終結すると、トルコの姿勢にはますます一貫性が見られなくなり、米国とロシアの間で揺れ動いて来た。最近は米露だけでなく、これに中国を加えても良さそうだ。

なんだか余りにも節操がないように思われてしまうけれど、冷戦終結以降、戦略的な価値の半減したトルコに対して、米国はあからさまに分離独立派のクルド勢力を支援し、国家の統一を脅かしている。忠実な姿勢なんて見せられるはずもなかったに違いない。

トルコは、ロシアや中国に対しても、友好的な態度は見せているけれど、親ロシア・親中国と言えるほどにはならないような気がする。

全ては難しい地政学的な条件の中で生き残るための戦略であり、当然、そこには好悪の感情もなければ、善悪正邪などの拘りもないだろう。

このトルコに比べたら、戦後一貫して「忠実な親米国」でやって来られた日本は幸運だったと思う。お陰で、非欧米国としては破格の繁栄を遂げることもできた。

しかし、米国が社会不安に悩まされ、中国がいよいよ国力を高めて来た現状を見ていると、その幸運は「あとどのくらい残っているだろう?」と不安になってくる。

いよいよ日本もトルコのように、大国の狭間で苦しむことになるのだろうか?

トルコの識者は、「米国が一帯一路を遮断しようとするなら、ロシアとトルコの協力を得なければならなかった」と論じている。そのため、トランプ政権はトルコに対しても友好的になろうとしたが、結局、挫折して政権を民主党へ明け渡してしまったという。

現在、トルコでは「バイデン新政権は何を仕掛けてくるのか?」と緊張が高まっているらしい。バイデン氏に纏わる不正や大統領選挙の不正を論じる声も聞かれたけれど、トルコがどうこう出来る問題ではないので、これは大して盛り上がっていなかったようだ。

ところが、日本の一部の論者の間ではトランプ氏への期待が未だに根強い。多分、それはトルコの識者と同様、「バイデン新政権では一帯一路を妨げられない」という見方によるのだろうけれど、まずは現状を認めなければならないはずである。

ひょっとすると、「米国が中国の脅威から日本を守ってくれる」という長年の信仰が揺らいできたため、焦りを感じているのだろうか? 

それは「米国への過度の信頼」に比べたら遥かに正しいかもしれないが、相手に依存している点で最初から間違っていると思う。「中国の脅威」に対しても、中国が何処かでつまずくことばかり期待している。なんだか全てが相手次第だ。将棋で相手の悪手を期待して指したら、大概、負ける。

また、それぞれの国に対して個人的には誰しも好悪の感情があるに違いないけれど、それで外交を論じられても困るだろう。

merhaba-ajansi.hatenablog.com