メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

ロシアとアメリカ

トルコ共和国は、ローザンヌ条約へ至る前に、やはり誕生したばかりだったソビエトと平和条約を締結しており、この為、英国は、さらなる侵攻を一旦諦めて、ローザンヌで交渉の席についたと言われている。
こうしてみると、トルコ共和国潜在的な脅威は、当初より、ソビエト~ロシアではなく、英~米だったのではないだろうか?
ソビエトに亡命して客死したナーズム・ヒクメットも、潜在的な脅威の認識では、アタテュルクと相通じるところがあったのかもしれない。
トルコは、米英が最も深刻な脅威だからこそ、彼らとの友好に腐心してきたような気がする。
この辺り、トルコと日本の歴史は何だかとても良く似ている。トルコの革命は、土足で上がり込んで来た英国によって、オスマン帝国が崩壊して行く過程で成し遂げられた。明治維新も、その発端となったのは、黒船の砲艦外交である。
以来、暫くの間、日本にとって最も深刻な脅威は、他でもないアメリカだったはずだ。その後、日本は日清・日露戦争を経て大陸へ進出したものの、最終的にはアメリカの壁にぶち当たってしまう。
そして、ひょっとすると、今でもトルコと同様、潜在的には、アメリカが最も脅威と言える存在であるのは、変わっていないかもしれない。
現在、トルコでは、1980年のクーデターによってもたらされた憲法の改正、あるいは新憲法が議題になっている。一部の識者によれば、クーデターの黒幕はアメリカであり、憲法の作成にも関与していたらしい。
これも何だか、そのまま日本に当て嵌まりそうだ。もちろん、だからこそ、アメリカとの友好が非常に重要であるという点も・・・。
冷戦の期間中、ソビエトは紛れもない仮想敵国であり、今でもロシアには余り良いイメージが持たれていないけれど、これには、ある程度、アメリカ中心メディアによる影響があるような気もする。
江戸の末期、黒船の砲艦外交に比べたら、ロシアの幕府に対する態度は遥かに紳士的だったという。日露戦争では、乃木大将による水師営の会見であるとか、東郷元帥が敵将ロジェストヴェンスキーを手厚くもてなした美談が伝えられている。
いずれにせよ、私にとっては、ロシアの方が、文化的にも歴史的にも、アメリカより遥かに魅力的である。アメリカが世界に広めたのは、不味いファーストフードとか禄でもないものばかりだ。やたらにうるさい音楽を奏でて、チンドン屋の総大将じゃないかと言いたくなる。
しかし、西欧の国々の中では、黒船以来の長い付き合い、太平洋戦争という凄まじい交流を経てきた所為か、もっとも近い存在であるのは間違いない。私は、トルコの語学学校で、ドイツやフランスの人たちと比べて、アメリカ人の留学生に何とも言えない親近感を覚えた。
アメリカにも美しい文化が全くないわけではないし、良き友人と成り得るアメリカの人も多いだろう。脅威ではなくなるまで、友好を深めて行かなければならないと思う。
一方、ロシアとの友好ムードは、プーチン大統領の来日で、少し盛り上がるだろうか?
プーチン大統領は、檜舞台への登場の仕方があまりにも悪かった。エリツィンに抜擢されたお陰でのし上がったKGBの元幹部、これだけで充分に陰湿なイメージが出来上がってしまった。実際のところはどうだか解らない。少なくとも、祖国の為に誠心誠意働いている雰囲気は伝わってくる。

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