メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

カドゥルガのハマム

カドゥルガの街並みは、20余年前とそれほど変わっていない。古いハマム(トルコ風呂)も残っていたけれど、このハマムには、ちょっと恥ずかしい思い出がある。
やはり93年頃だったと思う。通りがかりに、ふらっとここへ入った。下着の替えなども持ち合わせていなかったので、靴下だけ買ってから脱衣室に入り、ペシタマルという腰巻をつけて風呂場へ向かった。トルコのハマムではこれをつける決まりになっている。
風呂場の入り口辺りで、垢すりの親爺に声をかけられたが、これはもちろん断った。垢は自分で洗い流せば充分だ。垢すりなんて頼んだことは一度もない。
そしたら、垢すりの親爺が後ろで何か言った。軽い卑語だったけれど、気分の良かろうはずがない。『この野郎!』と思った。
でも、風呂場を出た頃にはもうさっぱりしていた。それで、服を着ると会計を済ませる前に、休憩所でのんびりコーラを飲んだ。
ところが、会計して釣りをもらった途端、また頭に血が上った。明らかにボッている。コーラがそんなに高いわけがない。『この野郎!』と、相手を睨みつけながら、思いっ切り文句を並べてやった。
すると、向こうも凄い剣幕で言い返してきた。「お前、靴下買ったじゃないか!」。
これには、『しまった!』と血の気が引いた。狼狽したまま、何も言葉が見つからない。黙って、そそくさと逃げるようにハマムから立ち去った。湯上りの爽快感など一つも残っていなかった。

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